※この記事は『インターネットマガジン2006年2月号』に掲載されたものです。文中に出てくる社名、サービス名、その他の情報は当時のものです。

[日本の注目ベンチャー企業]

ユーザーからの発信情報と企業のマーケティングを
アフィリエイトでつなげる!

アマゾンが提供するプログラムや、あらかじめ機能を備えるブログの普及により、ネットを使った副業として注目を集めているアフィリエイト。この分野における草分け的な存在のファンコミュニケーションズは、A8.net というASP 型のサービスによって、企業とユーザーにアフィリエイトサービスを提供している。同社の代表取締役社長柳澤安慶氏に、起業のきっかけや将来の展望について伺った。

文:仲里 淳(編集部)
写真:島津 隆雄

F@N Communications

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株式会社ファンコミュニケーションズのプロフィール

  • 所在地:東京都渋谷区
  • 設立年月:1999 年10 月
  • 代表取締役名:柳澤安慶(やなぎさわやすよし)
  • 社員数:54 名(2005 年9 月現在)
  • ウェブ:http://www.fancs.com/
  • 事業内容:アフィリエイトプログラム運用代行サービスの「A8.net」を主軸に、SNS、ブログ、ケータイサイト等の企画や運営など

アフィリエイトを主軸に媒体運営で可能性を探る

――取り組んでいる事業の概要をご説明いただけますか。

基本はアフィリエイトです。「A8.net(エーハチネット)」という、ASP 型のアフィリエイトサービスを提供しています。名前は「A =アフィリ」「8 =エイト」からきていて、ダジャレなんです。

ブログやウェブページを持っているユーザーがA8.net に登録することで、その中のさまざまな広告プロモーションのプログラムから、ご自身のページに合うもの、組み入れると収益が上がりそうなものを選んで貼り付けていただきます。

――現在、広告主企業の契約数やアフィリエイトサイトの数はどれくらいでしょうか。

稼働中のプロモーション数は約3200件以上、アフィリエイトサイトは約24 万サイトです。この数字は、アフィリエイト全体ではなくASP 型の事業モデルの中で2割強くらいのシェアではないでしょうか。アフィリエイトサイトの伸びは月次で1 万数千サイトですが、この数字は他社よりも若干有利だと考えています。いったん数が集まると、広告主もユーザーもそこに集まってきますので、その好循環が保たれているのだと思います。オークションにおける出品と入札の関係に似ていますね。

―― 最近のアフィリエイト利用はブログが多いように思いますが、その点について何か特徴や傾向のようなものはありますか。

ブログというのは、ユーザーや消費者の視点で書かれるものが多いですよね。そうすると、書かれている方自身が商品を実際に使っていたり、購入プロセスを買う前に調べたりしています。その内容がブログで紹介されていると、消費者視点の情報が事前に集められるので、商品情報として非常に価値が高く、アフィリエイトとの親和性も高いといえます。

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アフィリエイトプログラム運用代行サービスの「A8.net」は、アフィリエイトプログラムの利用率においてトップを誇る。
http://www.a8.net/

――社内の部署として営業、開発、媒体の3 つがありますが、媒体というのは具体的にはどういったことをされているのでしょうか。

媒体事業開発です。A8.net の中の新しい媒体作りです。これはチャレンジ的な要素が強い事業です。アフィリエイトの場合は積み重ねが重要になりますから、初めから収益を出そうというよりは、いろいろな切り口の媒体を持って消費者との接点を作っていこうということです。自社で媒体を持つというのは、もちろんそれ自身が売れる媒体に育ってくれるといいのですが、それとは別にA8.net を運営するうえでどういった広告やプロモーションが効果的なのか、媒体側の視点で考えることができます。

ほかにも、ソーシャルネットワークサービス(SNS)を運営していますが、これはコミュニティーを作ることが目的です。集客の手段として紹介制度が有効だと判断して立ち上げました。ですから、SNSということを強く意識しているわけではありません。

とにかくアフィリエイトが軸にあって、その中で媒体の企画開発をしているということです。

アフィリエイトは究極的なマーケティング

――創業のきっかけは何でしょうか。

1994 年に個人向けのISP を立ち上げたことがありますが、そこではインターネットをインフラとして捉えて、どうやって個人ユーザーに使ってもらうかということを考えていました。

今度はインターネットが育っていく中で、その上で何かビジネスができないかと考えました。以前、広告代理店でメディアやマーケット、消費者のことを考えて企画する仕事をやっていましたから、ネットをマーケティングに活用できるような事業モデルというのが自分に適しているのではないかと思い、いろいろと調べ始めました。

米国のネット事情を調べていたときに、アフィリエイトというモデルは非常に面白いなと感じました。広告業界の経験がある身からすると、成果つまり売上の最終ラインでお金を広告主から得るというのは、非常に厳しい世界なんです。効果があるかどうかは分からないけれども最初にもらえるほうが、売上になるはずです。ただ、逆に厳しいからこそ、マーケティングの手段としては最終形だと思いました。最終形なら、例え技術が進歩してネットの環境が大きく変わったとしても、そのモデルが廃れることはないはずです。ですから、これを事業にして投資しても、将来にわたってリスクは少ないのではないかと判断しました。

当時、ネット広告というと、バナーを1つ出して表示回数でいくらだとか、1 クリックでいくらというものでしたが、化けの皮がはがれるといった面もありました。これは技術が進化すれば、どんどん新しいものが出てきますから当然です。その中で、アフィリエイトというのは、ビジネスモデルさえ確立できれば、新規の顧客獲得という点においては、マーケティング手段として究極的なモデルだと、事業プランを作りながら確信しました。

――それは米国の事例などを調べていたときにですか。

当時、アマゾンがアソシエイトプログラムというものをやっていましたし、ちょうどその分野が注目され始めていました。あと、E コマースに詳しい知人とも、日本でもそういったサービスをやりたいと話していました。ただサービスがなかったので、ならば自分たちで作ってしまえばいいということで、自ら事業化して会社を立ち上げることにしました。

――すると当時は、国内で同様のサービスを提供する競合相手はなかったということでしょうか。

会社を立ち上げたときは、競合はすぐには出てこないと思っていました。ところが1999 年末にバリューコマースがサービスを開始していまいます。これにはわれわれも焦りまして、急遽システムを構築して2000 年6 月にはサービスを開始しました。当初は2000 年の暮れまでに立ち上げればよいだろうと考えていましたが、早めざるを得ませんでした。

――2000 年ですと、まだADSL が普及し始める前ですね。

そうです。その後バブルがはじけて、世の中が縮小傾向になりました。その影響で、事業計画は1 年くらい遅れてしまいました。市場が縮小傾向にあるのはしょうがないので、そこから2 年くらい我慢しました。とはいえランニングコストはかかりますから、資金繰りの面で苦しい状態が続きました。

好転の契機はYahoo! BB の開始です。NTTも価格競争に巻き込まれる中で、常時接続のインフラが整いだして業績も上向き始めました。われわれだけでなく、楽天をはじめネットサービスを提供する企業全体にいえることでしょう。その後は、ネットワークの広がりとともに、売上や実績も良くなってきているという感じです。

事業形態がASP 型ですから、どうしても投資先行型になるのはやむを得ません。投資期間が短ければ短いほど好ましいのですが、予定より1 年くらい遅れてしまいました。ただ、固定費などは増えませんから、これからは利益成長率はある程度の高さを保って、改善していけると考えています。


オフィスは、1 フロアにすべての部署が並ぶ(打ち合わせスペースが別フロアにある)。パーティションがなく、フロアの端から端まで見通せて、文字通り風通しの良さそうな雰囲気。

チャレンジ精神を忘れない社風をキープしていく

――会社のキャッチフレーズや社内でのスローガンのようなものはありますか。

社内的には「4C2P」という社員の行動指針を示すものを定めています。

最初の「C」はチャレンジで、これはいつも挑戦をしてベンチャーとしての気持ちを持ち続けようというものです。次の「C」はコンフィデンスで、信頼を大切にしようというもの。次がコンプライアンス(法令遵守)、最後がコミュニケーションで、対話をしていこうというものです。2 つの「P」は、ポジティブとプライドです。常に前向きで、プロフェッショナルな仕事に誇りを持って取り組もうというものです。

以前から、とにかく失敗を恐れずに取り組もうということは、会社全体でキープしていきたいと思っていました。新規媒体の立ち上げもそうですが、新しいことには早め早めに取り組む。その代わり、ダメなものの撤退もきちんとしていく必要はあります。

――社名にはどういった由来があるのでしょうか。

ファン(Fan)は、熱狂的なという意味ですが、これからはそういったファン作りのコミュニケーションが大切になるだろうという思いが込められています。

私が広告やマーケティングでマス4 媒体を使っていたときは、ターゲティングという概念が重要でした。ただし、そのときのターゲットというのは世代や地域で区切ったものでしたが、ネットが普及して個人の時代になりつつある今は、この考えはもう古いと思っています。60 代でコスプレが好きな女性とか、ガンダムや仮面ライダーファンでもよいのですが、そういう好きなものというのは年齢や性別を越えると思うんですね。マス(コミュニケーション)からファン(コミュニケーション)へということです。

もう1 つは、ネットやマーケティング業界に風を巻き起こすぞという意図もあります。長くていいづらいですけどね(笑)。

――今後の目標や将来の夢はなんでしょうか。

ネットサービスの中でも、特にマーケティングという事業領域で展開していこうと考えています。ネットマーケティングと一言でいっても奥が深いので、ネットならではの新しい手法をどんどん作って提案していきたいですね。

これからはブログを中心にして、個人が発信する情報というのが重要になります。個人の持つ情報と企業のマーケティングをうまく組み合わせて、両者がメリットを得られるような仕組みやサービスが作れて、それで日本や世界で一番になれるといいなと思っています。

10 年前、私がメールを使っていると妻から、そんなオタクみたいなことをして大丈夫かといわれたのですが、今は彼女自身が当たり前のようにメールを使っています。

この10 年でメールは当たり前の存在になったわけです。われわれも自分たちが作ったものが世の中で当たり前になるような、そういう何か役に立つものを残すことができたらいいと思っています。

――ありがとうございました。