※この記事は『インターネットマガジン2005年9月号』に掲載されたものです。文中に出てくる社名、サービス名、その他の情報は当時のものです。

[日本の注目ベンチャー企業]

目標はグーグル、アップル、マイクロソフト

ケータイ・フルブラウザー「jig ブラウザ」の人気で一躍脚光を浴びるjig.jp は、典型的な若手ベンチャー企業だ。地元である福井を開発拠点とし、ユーザーからの要望をセンスよく実現し、「かゆいところに手が届く」ような製品を提供し続けている。

同社の設立者で代表取締役社長を務める福野泰介氏に、ケータイにかける思いと将来の目標、夢についてお伺いした(26ページの本誌特集も参照)。

文:仲里 淳(編集部)
写真:島津 隆雄

jig.jp

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株式会社jig.jp のプロフィール

  • 所在地:東京都千代田区九段北
  • 設立年月:2003 年5 月28 日
  • 代表取締役名:福野泰介
  • 社員数:19 名(2005 年6 月現在)
  • ウェブ:http://jig.jp/
  • 事業内容:携帯電話を使ったアプリケーションの企画・開発・マーケティング

ケータイのビジネスは一番エキサイティングな分野

――取り組んでいる事業の概要をご説明いただけますか。

一言でいうと、「ケータイアプリを企画開発して、一般のユーザーに使っていただく」というものです。その中で、いくつかの製品を有料で販売しています。

――ケータイフルブラウザーのjig ブラウザが大ヒットしてますね。ケータイ以外の製品を手がける予定はないのでしょうか。

今のところ予定はありません。ノートPC よりもさらに小さいケータイを非常に多くの人が使っている状況が、非常にエキサイティングなんです。また、ソフトをダウンロードして使うことにも抵抗が少ない。ケータイはパソコンと違って安心だというイメージがありますし、実際にそう思います。ソフトをみんなに使ってもらいやすいというのは、作る側にとっては重要ですし、面白いと思っています。

フルブラウザーの出現は既存ビジネスをさらに広げる


有料ソフトにもかかわらず、その使い勝手の良さで人気の「jig ブラウザ」。 jig.jp では、このほかにもいろいろな便利ソフトを提供している。

――フルブラウザーは、既存のケータイビジネスを崩すかもしれないという見方もあります。また、何でもありのPC の世界に入ってしまうと、安全性が薄れるという人もいますが。

部分的に崩れるところもあると思いますが、全体としてビジネスは広がっていくと考えています。フルブラウザー利用者は、より多くの時間をケータイによるインターネットの利用に充てるようになり、業界全体の活性化につながるのではないかと思っています。

また、安全性についてですが、これまでも勝手サイトへのアクセスが認められていたわけですし、PC サイトを見るようになったからといって状況が変わるものではないと思っています。むしろ、メールから直接サイトにアクセスできない分、安全が高いといえるかもしれません。

――フルブラウザーでPC サイトが見られるようになると、逆にケータイ用サイトを作るというのは無意味というか、サイトを作る側からするとケータイを意識する必要はなくなってくるのかなという気もしますが、それについては。

確かにそういう面もありますが、どちらかというと、もっとケータイユーザーを意識してほしいと思っています。日本のブロードバンド契約数は約2000 万ですが、常時接続という意味では同等なインターネット対応のケータイ契約数は約7000 万にも達しています。これは、今後の通信量定額サービスの注目度から見ても無視できない存在になってくると思っています。時代に逆行するようですが、ケータイでも見やすい軽いページ作りなどしてもらえるとうれしいですね。

また、ケータイ用に作られたサイトは、情報量が小さくてシンプルなものになります。応答速度や操作性の点で優れているので、今後見直されてくると思っています。そもそもフルブラウザーは、ケータイサイトでは情報が得られない場合の代替手段として開発したものですから。


東京のオフィスでは主にサポートと営業スタッフが働く。ベンチャーらしい雰囲気で、部屋には音楽が流れる。ちなみにインターネットマガジン編集部からは徒歩3 分の距離。

サーバーとの組み合わせとアプリとPC の連携で差別化

――jig ブラウザ以外にもフルブラウザーがいくつか登場しています。また、キャリア自身が標準で搭載してきたりもしています。その中で、jig ブラウザを使ってもらうためのメリットや差別化というのは何でしょうか。

大きく3 つあります。まず1 つ目は、きめ細かいバージョンアップです。PC 用に作られたサイトを、ケータイで見るのはやはり無理がありますが、そこはソフトウェアの工夫でできるだけ使い勝手を良くすることが可能です。そこを工夫の積み重ねや、利用者の方からの要望を継続的に取り入れていくことで、どのフルブラウザーよりも便利なものにしていこうと思っています。

2 つ目は、サーバーとの組み合わせによる機能の強化です。jig ブラウザでは、処理負荷の高いPC サイトのレンダリングをサーバーと分担させることで、単体のフルブラウザーに比べ、動作が高速に、なおかつ通信量が小さくなっています。また、自宅やネットカフェのPC とともに使うシーンを想定し、お気に入り情報をサーバーと同期させることによって、PCからそのお気に入りを利用可能にしています。このようにサーバーを経由することで、ケータイだけではできなかったことを、今後もどんどん増やしていこうと思っています。

3 つ目は、その他のアプリケーションとの連携利用です。jig では、ケータイユーザーにいかにケータイを便利に使ってもらえるかという観点で、さまざまなアプリケーションを提案していこうと思っています。jig ブラウザを核として、それらのアプリケーションを連携動作させることで、さらなる利便性を提供していこうと思っています。

例えば、jig ブラウザとスケージューラアプリ、メーラーなど、複数のアプリを連動させることで可能性が広がります。

目標は、グーグル、アップルそしてマイクロソフト

――意識していたり目標としていたりする企業はありますか。

目標としているのは、グーグル、アップル、そしてマイクロソフトですね。

グーグルは、目的を達成するためのサービスをシンプルに提供している点がすごいと思います。また、新しいサービスを次々と提供し続けているのも魅力的です。グーグルで20%ルールというのがありますが、jig でも週に1日、好きに何かを作ろうという日を決めて、その日に作ったものを活かそう、ということをやっています。そういう、開発者を盛りたてていくような会社にしたいと思っていますので、グーグルは非常に刺激になります。

アップルはブランド力ですね。グーグルは、水や空気のようなもので、日常的にあたりまえのように使っていてもあまり帰属意識というものがないと思います。もっと使いやすいものや速いエンジンがあれば、そちらを使うようになりますよね。アップルの出す製品というのはセンスがよくて、ファンがたくさんいるじゃないですか。ブランドのよさをうまく出せているという点で、jig もああいう風になれるといいなと思っています。

マイクロソフトは、多くの人に製品を使ってもらいたいという点で目標としています。マイクロソフトがウィンドウズを、多くの人がインターネットを使えるようになりました。人々がネットやコンピュータを使う新しい世界の創造をjig でもしたいと思っています。

――会社のスローガンみたいなものはありますか。

スローガンというかjig の使命だと思っているのは、余剰時間を創出してより多く遊んでもらおうということです。社内的にも快適な環境で仕事ができるようにと心がけています。短時間で働いてしっかり遊ぶことを目標にしています。

作っているかどうかは、使う人にも伝わると思うんですよ。

――「jig」という言葉の意味や、それを社名にした由来を教えてください。

「jig」という言葉には、「テンポの速い軽快なアイルランドのステップダンス」という意味があります。アプリケーションで最も重視している“軽快”という意味を含み、3 文字と短いので、ケータイからアクセスしやすいというのもポイントです。

そのjig を、日本発であることを主張し、なおかつ短いjpドメインで取得して、ドメイン名そのものを会社名として英文登記しています。

――開発の拠点は今も福井とのことですが、地元にこだわる理由は何ですか。

私をはじめ、開発メンバー全員が福井高専の出身で、福井高専から気軽に寄れるところですね。高専で特別講師として講義をしたこともあります。

私が福井高専にいたときも、学校でわからなかったことをアルバイトでうまく広げることができたという経験から、それを今の学生にも感じてほしいという気持ちがあり、在学生に経験の場の提供なども行っているのです。

それと、プログラマーってあまり日の目を見ることが少ないですが、世の中を変えるものを作る能力を持っているのはプログラマーなんですよ。それを活かす機会を、インターンやアルバイトでつかんでほしいなと思っています。

――将来の夢は何でしょうか。

人がコンピュータを使う際ののインターフェイス、入り口に当たる部分に、jig を使ってもらうというのが設立当初からの夢です。

今後さらにインターネットで提供されるサービスは多様になってくると思います。ただし、複雑になっては使ってもらえないので、そこをシンプルにした製品を提供して多くの人に使ってもらいたいと思っています。

――ありがとうございました。