※この記事は『インターネットマガジン2005年12月号』に掲載されたものです。文中に出てくる社名、サービス名、その他の情報は当時のものです。

[日本の注目ベンチャー企業]

日本発のポッドキャストビジネスモデルで
世界を驚かせる!

iTunesの対応で注目されるポッドキャストだが、それ以前から精力的に取り組んできた企業の1つがボイスバンクだ。音声ブログの先駆けとなるケロログの運営やさまざまな企業のポッドキャスト化支援を行うほか、リーダーソフト「アリゲーター」を独自に開発し、ポッドキャストのさらなる普及とビジネス化も目指す。代表取締役社長である木ノ川義英氏に、音声コンテンツへの思いと将来の目標について伺った。
文:仲里 淳(編集部)
写真:渡 徳博

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株式会社ボイスバンクのプロフィール

  • 所在地 兵庫県西宮市
  • 設立年月 2001年11月27日
  • 代表取締役名 木ノ川 義英(きのかわ よしひで)
  • 社員数 14名(2005年10月現在)
  • ウェブ http://www.voice-bank.co.jp/
  • 事業内容 ポッドキャスティングシステムやソフトの開発/運用、ウェブビジネスソリューションの企画販売、広告代理業など

ポッドキャストのきっかけはFLASH
ブログシステムを一から開発

―― 取り組んでいる事業の概要をご説明いただけますか。

●木ノ川 基本はウェブやシステムの構築です。特にFLASHを使って音声を扱うことをやってきまして、動画も含めてそういったサイトを作らせてもらっています。データベースとFLASHは面白いと思っていますし、最近ではOS Commerceなどのパッケージを使った販売サイトの構築などをしています。あと今は、やはりケロログの対策が非常に多いのですが、その経験を活かしたポッドキャスト用ASPサーバーのASS販売というのが大きいですね。
最近では、英語教材のアルクさんのポッドキャストもスタートさせました。配信だけではない使い方もしていますが、これはケロログをベースにした考え方ならではのものです。

―― 音声ブログのケロログなども運営されていますが、ビジネスの柱は何ですか。

やはり、実利となるとシステム開発が多いです。VXMLのゲートウェイを代理販売していますが、日本ではNTTくらいしかやっていませんので、そこで安定した収入を得られればと考えています。電話はネットへの入り口となるツールなので、非常に可能性があっていろいろと使えるなと。電話からインターネット上のデータベースにつなげられて、在庫管理やカード決済、音声を録音してデータベースに登録すれば外出先から聞くといったこともできます。
そうしたいくつかのパッケージを考えたときに、わかりやすい例の1つとして、電話から録音したものがネット上にファイルとしてアップされるという音声ブログとして開発したものがケロログなんです。でも、かえってわかりにくかったみたいですけどね(笑)。
製品としては、たとえばキャンペーンなどでアンケートをしたり電話で資料請求を受けたりするためのシステムはすでにあります。それをVXMLゲートウェイと組み合わせて使ってもらえるものも用意してあります。

―― ポッドキャストに取り組み始めたきっかけは何ですか。



日本のポッドキャストの先駆けとなった音声ブログのケロログ。もちろん木ノ川社長自身も精力的に音声発信中!
http://www.voiceblog.jp/

以前からVXML関連に興味があって、NTTコミュニケーションズさんのVポータル(VXMLを使った情報提供サイト)に協力していたのですが、やっぱり自分の製品ではないのでなかなか融通が利きません。もう少し自分たちで好きなようにやりたいと思っていたところ、米国のPLUM社というところがいいゲートウェイ製品を出しているのを知りました。僕らもVXMLエディターソフトを開発していましたし、それでやらせてほしいといって日本での独占販売権を得ました。
ちょうどそのころ米国に目が向いていたので、ポッドキャストというものが話題になっていることを知りました。それを見て、うちも似たようなことをやったことがあるなと思って。
FLASHの動画と音声を切り離して、音声だけ使うと非常にレスポンスがいいんです。それをニュースティッカーなどと連動させると、更新してすぐに音声を流すことができるのですが、試しにFLASHの音声ファイルをMP3にして、RSSのタグを.swfから.mp3にしたところ、ファイルが落ちてきたんです。これはブログにできそうだなと思い、最初はMovable Typeを使おうとしたのですが、手直しが効かない。結局、自分たちで作ろうということになって、一からブログを作りました。とはいえ、ブログシステムなんて作った経験がありませんから、最初は「トラックバックって何だ? これ必要なのか?」みたいなことをいっていましたね。
まぁ、ITの人からいわせると、ポッドキャストは技術的にはたいしたことないんですよね。ただ、あるとき放送局に行く機会があって、そこで感じたのは非常にアナログ的な世界だなと。そこで、ポッドキャストというものがあってデータの管理にも便利だという話をしたら興味を持ってくれてコンテンツを一度作ってみようということになりました。
そのあと、いくつかのFM局でポッドキャストを始める際に、お手伝いさせてもらっています。

―― ネットやITの分野にかかわろうと思った理由はなんですか。

きっかけは、1995年の阪神淡路大震災です。情報処理センターのボランティアがあって、そこでは震災の膨大な情報をデータベースに登録していって、電話などで問い合わせがあると検索して答えるという活動をしていました。
そのシステムを作っていた人たちが東京に帰ってしまうということで、どうしようかといっていたら、メールやネットというものがあるよと教えてくれました。そこからインターネットってすごいなと思って。ただ、最初は趣味程度で、ちょうどITバブルで起業がはやった時期でしたが、そのときは起業とかにはあまり興味はありませんでした。
起業のきっかけは自転車です。GWSLAというサイクルスポーツ関連のNPOをずっとやっていますが、けっこう時間をとられます。もともとは不動産の企画営業でしたが、サラリーマンではだめだなと思って、それで独立しました。

音が持つ生感とダイレクト感
クリエーターの台頭に期待

―― ずっと声や音にかかわってきているようですが、何かこだわりみたいなものはありますか。

声って近い感じがするじゃないですか。『世界の中心で、愛をさけぶ』なんかも声のコミュニケーションが要素にありますけど、やはり声ならではのものがありますよね。同じ「よろしくお願いします」とか「申し訳ないです」って言葉でも、文字と声とでは伝わり方が異なります。
絵文字なんかも伝達手段としておもしろいですし否定はしませんが、声だと響くっていうのはやっぱりあるんじゃないですかね。それが、デジタルを使うと簡単に扱うことができますけど、今まではあまりされていませんでした。たとえば、手紙に押し花をつけたりする感覚で、ひと手間かける。年賀状は送るんだけれども、さらに子どものビデオメールを送ったりすると非常に喜ばれたりしますしね。
ただ、ツールが難しいんですよ。ビデオメールも、ちゃんと見られた人とそうでない人がいました。ポッドキャストは注目されているので、いろいろと整備されて「これとこれを買って、登録すれば誰でも簡単に聞けるよ」というところまでいくといいですね。今、ソフマップさんといっしょに、ポッドキャストを始めるためのパッケージを企画しています。今後はオリジナルPCとの組み合わせだけでなく、凝った製作ニーズにも対応できるように、ソフマップさんの音楽制作の専門店「CREATORS LAND」を活用した提案もしていきたいですね。


オフィスは雑然としており、ごく普通の事務所の雰囲気。この大阪支店のほかに、兵庫県西宮市の本社と東京支店がある。米国とのやりとりのため、ニューヨーク時間と日本時間を示す2つの時計を用意(右上の写真)。

―― ポッドキャストの今後の可能性というものは、どのように見ていますか。

ラジオというのは、パッとすぐに情報を出せる処理能力の高いメディアだったと思います。それがインターネットが出てきて、場合によってはラジオよりも早い情報が出せるようになってきました。その中で、ラジオの有用性というのが軽視されるような時期がここしばらくあったように思います。でも、声の生感とかダイレクト感みたいなものがもともと音にはありました。それがポッドキャストですばやくコンパクトに出せるようになったことで、改めて見直されるのではないかと。
あと、ラジオ局がやるのもいいのですが、今後はそうじゃない素人でもいいコンテンツを作って、人気を集めるようになるんじゃないでしょうか。そうしたら、音楽使用料を払ってでもポッドキャストで番組を作ってもいいと思いますし、そのクリエーターが自分でスポンサーを探してきて番組をやるというのもありじゃないかなと。現実には、音楽の使用料が高い気がしますけど。

―― 11月に米国で開催される「Portable Media EXPO」という、ポッドキャスティングに関するイベントの日本事務局をされていますね。

3月ごろに、主催のTNC New Mediaというところに電話して、日本でもポッドキャスティングを広めたいので、何か一緒にやれないかという話を持ちかけました。もちろん日本でも今年初めてなので何もできないかもしれないけども、とりあえずやってみようと。
内容はカンファレンスが中心になると思いますが、やはり音楽のライツマネジメントとビジネスモデルの事例紹介になりそうな感じです。そういう意味ではシンポジウム的なものかもしれません。まあ今年初めてのイベントですので、誰にもわからないんですけどね。
もちろん僕も参加しますが、世界中から関係者が集まってきますので、そこで日本の会社として同じ列に並んでいたいですね。僕らもアリゲーターというソフトには自信を持っていますし、世界を見ても同じようなソフトはほとんどないので、そこで僕らのビジネスモデルをぶつけたい。日本のビジネスモデルや事例紹介をして、それが彼らにとって響くものなのかどうか見てみたいです。

―― 今後の目標などは。

Odeo.comのように、番組を作るツールを用意していて、かつポータルにもなっているという姿は目指したいです。アリゲーター自体はその可能性を持っていると思いますし、映像も扱えますから面白いことができると考えています。米国で「日本人がここまで考えたのか!」と、ちょっと驚かせるようなことをしたいですね。なかなか時間がとれなくて思うように進まないのですが、できる限り早く英語版の提供も始めたいと思っています。ケロログ自体も1つの通過点ですが、ユーザーからのリクエストをもらって改良を続けているので、やることリストがたくさん溜まっています。それが一通りなくなったら、ケロログモデルとして海外に出してもいいかなと考えています。
個人が自分でコンテンツを作って売り込めるというのは、ネットの最大の武器じゃないですか。それがリッチコンテンツでできるというのは、とても面白いです。そこにもしツールの壁というものがあるとしたら、それを乗り越えられるようなものをどんどん出していきたいなと思っています。

―― ありがとうございました。

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