2016年10月12日から14日まで、千葉県・幕張メッセで開催された「第3回 国際次世代農業EXPO」。「国際農業資材EXPO」「国際6次産業化EXPO」などと併せて開かれたこの展示会では、IoTによるデータ解析やドローンなど農業を効率化する最新技術とソリューションが出展された。その一部を紹介する。

ドローンによる画像センシングで作物の生育状況を可視化

ドローン・ジャパンのブースは「ドローン米」と印字した米袋をドローンの機体とともに並べて来場者の目を引いた。メイン展示は同社が2017年4月から開始する「DJアグリサービスプラットフォーム」。これはマルチスペクトルセンサーを搭載したドローンが自動航行し、圃場(ほじょう)や作物の種類、生育段階にあわせた画像センシングを行い、得られたデータを解析して生育状況を「見える化」、農業アプリ事業者や生産者・生産契約者に提供するサービス。国内では土木や検査市場で注目されているドローンだが、農業における期待も大きい。精緻な画像センシングとデータの植生解析により、収穫期の判断や収量の予測が的確になるという。同社のブースではまた、水の中に入って障害物を避けながら水田の状態を隅々まで計測する「Aigamo Drone」(アイガモドローン)のプロトタイプも展示。固定のセンサーを置かなくともドローンが水位や水温を計測し、細やかな水質管理ができることをアピールしていた。

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写真1:ドローン・ジャパンのDJアグリサービスプラットフォーム
AGRINEXT
写真2:開発に協力した篤農家が生産した米を「ドローン米」として販売
AGRINEXT
写真3:水田の中を自動で動くAigamo Droneのブロトタイプ

農業IoTに向けたLPWAネットワークやクラウド

NTTグループは、さまざまな企業や団体と共同で取り組んでいるソリューションを展示していた。その中でもNTT西日本は、省電力・長距離通信技術(LPWA:Low Power Wide Area)を使う農業IoTのネッワークを紹介していた。積水化学工業が持つ水位制御システムをセンサーとして置き、LoRaWANという規格の無線通信で水位情報をゲートウェイまで送って配信する。こうして田畑の給水管理、水位制御がリモートで行えるというシステムだ。LPWAの中でも標準化が進むLoRaWANを使うことで、通信費を抑えて農業IoTを実現できると見込み、すでにフィールド実験を開始しているという。
一方、携帯電話ネットワークを使った例としては、JAめむろ(北海道十勝の芽室町)がNTTドコモと組んで行っている事例を紹介していた。ひとつは小麦を収穫するコンバインにGPS付き携帯を搭載して位置情報を把握し、給油支援などの作業効率化を図る大規模農業向けの情報管理システム。もうひとつはNFCとタブレットを活用して農家とJAとが情報を共有するクラウドシステム。以前は農家との情報とのやりとりを紙で行うことが多かったが、タブレットによるペーパーレス化やクラウドによるDB管理が効率化の第一歩となるという。
NTTグループはこのような生産向けのソリューションと流通業者向けのソリューションの両方で農業におけるバリューチェーン全体を最適化できるとアピールしていた。

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写真4:NTT西日本が積水科学工業の「水まわりくん」という多機能水位制御装置を展示し、IoTネットワークを紹介
AGRINEXT
写真5:NTTグループは「光のスマート農業」という名前でグループ戦略を紹介

ICTによる農業改革を唱うベンチャー

NTTのブース内の中心部に紹介されていたベジタリアの「PaddyWatch」(パディウォッチ)は、昨年発表された水稲生産専門のセンサーで、圃場に置くため乾電池で駆動し、NTTドコモの通信カードを搭載。圃場内の水位、温度、湿度のデータをインターネットに配信し、スマホやタブレットのアプリで確認できる。同社の代表はIT起業家として有名な小池聡氏。インターネットビジネスをいち早く手がけたIT起業家が農業ビジネスに参入したと注目されている。同社は新潟市におけるドローンの実証ブロジェクにも参加している。自社のブースでは農地の大区画化や農業人口の減少・高齢化など業界が抱える課題をデータで解説し、同社の製品がその解決に寄与することを訴求していた。

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写真6:NTTのブースの中心に置かれていたベジタリアの水田センサー「PaddyWatch」
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写真7:ソフトバンクグループはPSソリューションズはPepperで製品を解説

 

 (錦戸陽子)

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https://i.impressrd.jp/wp-content/uploads/2016/10/agrinext01-1024x768.jpghttps://i.impressrd.jp/wp-content/uploads/2016/10/agrinext01-130x130.jpg編集部寄稿IoT2016年10月12日から14日まで、千葉県・幕張メッセで開催された「第3回 国際次世代農業EXPO」。「国際農業資材EXPO」「国際6次産業化EXPO」などと併せて開かれたこの展示会では、IoTによるデータ解析やドローンなど農業を効率化する最新技術とソリューションが出展された。その一部を紹介する。 ドローンによる画像センシングで作物の生育状況を可視化 ドローン・ジャパンのブースは「ドローン米」と印字した米袋をドローンの機体とともに並べて来場者の目を引いた。メイン展示は同社が2017年4月から開始する「DJアグリサービスプラットフォーム」。これはマルチスペクトルセンサーを搭載したドローンが自動航行し、圃場(ほじょう)や作物の種類、生育段階にあわせた画像センシングを行い、得られたデータを解析して生育状況を「見える化」、農業アプリ事業者や生産者・生産契約者に提供するサービス。国内では土木や検査市場で注目されているドローンだが、農業における期待も大きい。精緻な画像センシングとデータの植生解析により、収穫期の判断や収量の予測が的確になるという。同社のブースではまた、水の中に入って障害物を避けながら水田の状態を隅々まで計測する「Aigamo Drone」(アイガモドローン)のプロトタイプも展示。固定のセンサーを置かなくともドローンが水位や水温を計測し、細やかな水質管理ができることをアピールしていた。 農業IoTに向けたLPWAネットワークやクラウド NTTグループは、さまざまな企業や団体と共同で取り組んでいるソリューションを展示していた。その中でもNTT西日本は、省電力・長距離通信技術(LPWA:Low Power Wide Area)を使う農業IoTのネッワークを紹介していた。積水化学工業が持つ水位制御システムをセンサーとして置き、LoRaWANという規格の無線通信で水位情報をゲートウェイまで送って配信する。こうして田畑の給水管理、水位制御がリモートで行えるというシステムだ。LPWAの中でも標準化が進むLoRaWANを使うことで、通信費を抑えて農業IoTを実現できると見込み、すでにフィールド実験を開始しているという。 一方、携帯電話ネットワークを使った例としては、JAめむろ(北海道十勝の芽室町)がNTTドコモと組んで行っている事例を紹介していた。ひとつは小麦を収穫するコンバインにGPS付き携帯を搭載して位置情報を把握し、給油支援などの作業効率化を図る大規模農業向けの情報管理システム。もうひとつはNFCとタブレットを活用して農家とJAとが情報を共有するクラウドシステム。以前は農家との情報とのやりとりを紙で行うことが多かったが、タブレットによるペーパーレス化やクラウドによるDB管理が効率化の第一歩となるという。 NTTグループはこのような生産向けのソリューションと流通業者向けのソリューションの両方で農業におけるバリューチェーン全体を最適化できるとアピールしていた。 ICTによる農業改革を唱うベンチャー NTTのブース内の中心部に紹介されていたベジタリアの「PaddyWatch」(パディウォッチ)は、昨年発表された水稲生産専門のセンサーで、圃場に置くため乾電池で駆動し、NTTドコモの通信カードを搭載。圃場内の水位、温度、湿度のデータをインターネットに配信し、スマホやタブレットのアプリで確認できる。同社の代表はIT起業家として有名な小池聡氏。インターネットビジネスをいち早く手がけたIT起業家が農業ビジネスに参入したと注目されている。同社は新潟市におけるドローンの実証ブロジェクにも参加している。自社のブースでは農地の大区画化や農業人口の減少・高齢化など業界が抱える課題をデータで解説し、同社の製品がその解決に寄与することを訴求していた。    (錦戸陽子) NextPublishingからのお知らせ Internet of Everythingの衝撃 シスコシステムズでは、IoTが進化した新たなインターネットのイノベーションを、Internet of Everything(IoE)と定義します。次世代インターネットがもたらす世界について、インターネットの創成期から深くその発展に寄与してきたエキスパートとして、シスコが持つIoEのビジョンとアプローチについて紹介します。インターネット白書2016 20年記念特別版 現在、過去、未来のインターネットを概観できる、業界定番の年鑑です。「IoT」や「ドローン」など様々な注目キーワードを取り上げ、インターネットによる技術・ビジネス・社会の変革を伝えます。IT第二幕を世界のニュースで横断読み解き。