さくらインターネット株式会社は、2016年から提供している「さくらのIoT Platform β」を2017年4月18日より正式リリースし、「sakura.io」(さくら・あいおー)という新名称で提供することを発表した。東京支社で行われた記者発表では、IoT時代の「情報信託スキーム」の調査・研究に着手することも語られた。

IoTのための統合環境を提供する「sakura.io」

sakura.ioは、モノとデータをやりとりするために製品に組み込む通信モジュールと、データの保存や連携システムを統合して提供するIoTプラットフォームである。通信モジュールが組み込まれたデバイスから、さくらインターネットのデータセンターまでをLTEの閉域網と専用線でつないでおり、APIのみを外部連携するセキュリティアーキテクチャになっている。

sakura.ioの新しいロゴ

IoT事業推進室 室長でIoTプラットフォームシニアプロデューサーの山口亮介氏は、IoTのビジネスを作るうえで「やらなければならない」データの送受信手段やデバイスの認証・管理、安全な通信経路の確保、データの収集/蓄積/管理をsakura.ioが担うことで、サービス側が企画やデータ分析など「やりたいこと」に注力できるとし、これがMVNOや他社とは異なると述べた。
また、IoTの場合、モノづくりのスキルとウェブのスキルが必要になるが、この2つはエンジニアが分かれていることが多い。「sakura.io」を介してモノ側(マイコン)が発する電気信号とウェブで利用されるJASON形式とを相互にデータ変換することでモノのデータをウェブのサービスに展開できるため、エンジニアのスキルセットを大きく拡張しなくてもIoTのサービスを作ることができるというメリットも紹介した。
IoT市場の中では、最もユーザー母数が大きく成長が見込める商業・コンシューマー領域を中心にした「広義」のIoT市場をターゲットとする。すでに採用している業種・分野は広く、行政とベンチャーが協力してバスの乗降データの集計や、ドローンの航行管理システムのバックエンドでも実績があるという。

IoT事業推進室 室長兼IoTプラットフォームシニアプロデューサーの山口亮介氏

最新通信モジュールとプラットフォームの機能

モノをつなぐ部分を担う通信モジュールは、まず、LTEカテゴリー1に対応した「単体方式」のものから発売した。価格は1台8000円(税別、90個入りのトレイも用意)。月額利用料金は1台あたり60円(税別)。オプションパーツとしてArduinoやRaspberry Pi用のシールド、開発ボードも提供する。
通信モジュールはこのほか、2.4GHzまたは920MHz(LoRa)の変調方式を採用し、LoRaから各変調方式に対応するゲートウェイを経由して送受信する「ゲートウェイ方式」のものも開発中である。LPWA(Low Power、Wide Area」の一つであるLoRaに関しては、仕様や料金体系をさくらインターネットと共に創り上げていくテストメンバー(法人)を募集している。テスト期間は2017年から6月下旬〜10月で10社程度を予定しているとのこと。
プラットフォームとしての具体的な機能は、デバイスの自動接続機能(認証・識別)、データの自動保存機能、通信モジュール自体のアップデートや時刻情報、さらに新機能としてGPSを組み込まなくても簡易位置情報が得られる機能やデバイス側からファイルを取得できる「ファイル配信サービス」が追加された。
外部連携機能としては、汎用プロトコルとしてWebsocket、MQTT、WebHooksが使用でき、またmyThings、AWS_IoT、Microsoft Azureなど他のデータ処理プラットフォームとの連携もできる。
執行役員で技術本部副本部長の江草陽太氏は、「このプラットフォームにより、新しい価値・新しい市場を生み出すことができる。今後はさくらインターネットの利用者同士でデータの流通が簡単にできるようなデータエクスチェンジの仕組み作りも行いたい」と述べた。

IoT時代の情報信託スキームの調査・研究にも取り組む

続いてさくらインターネットのフェローの小笠原 治氏が、IoTによって集められたデータをエクスチェンジする先のアプリケーションの一つとして、「情報銀行」の調査・研究に取り組むことを明らかにした。
「情報銀行」とは、銀行の口座のように、個人のリアルデータ(動作、行動、体内変化、環境変化など)を預かる個々の口座を作るというものである。
このリアルデータをどのように扱っていくかについて研究や実証実験を行うため、日本総研と組んでSmart Infomation Banking Consortiumを発足。データをためるフェイズでは扱う基準について厳格なガバナンスが必要になるため、制度面も含め、日本総研などとともにガイドライン案の作成を行う予定だ。また、匿名化された情報をいかに利活用して経済価値を高め、ビジネスエコシステムを作るかという観点では、データの分析・解析が必要になるため、IoTプラットフォームだけでなく、この2年間、さくらインターネットが取り組んできたOpen Fog(フォグコンピューティング)や高火力コンピューティングなど複数のリソースを一つながりにして活かせるのではないかと考えているという。しかし、扱う法制度も多くあるため、まずはフィジビリティースタディーからスタートする。
小笠原氏は「データを守るという、セキュリティの視点をベースにしながら、データの利活用も含めた研究をする例は世界でも珍しいのではないか」と述べ、ガイドライン案のみならず、システムのプロタイプを作り、実証実験へと段階を進めていく展望を語った。

フェローの小笠原浩氏(左)と、技術本部副本部長で執行役員の江草陽太氏(右)

◆sakura.ioのサービスサイト
https://sakura.io/

(錦戸陽子)

 

https://i.impressrd.jp/wp-content/uploads/2017/04/P1010455-600x450.jpghttps://i.impressrd.jp/wp-content/uploads/2017/04/P1010455-130x130.jpgnisikido寄稿IoTさくらインターネット株式会社は、2016年から提供している「さくらのIoT Platform β」を2017年4月18日より正式リリースし、「sakura.io」(さくら・あいおー)という新名称で提供することを発表した。東京支社で行われた記者発表では、IoT時代の「情報信託スキーム」の調査・研究に着手することも語られた。 IoTのための統合環境を提供する「sakura.io」 sakura.ioは、モノとデータをやりとりするために製品に組み込む通信モジュールと、データの保存や連携システムを統合して提供するIoTプラットフォームである。通信モジュールが組み込まれたデバイスから、さくらインターネットのデータセンターまでをLTEの閉域網と専用線でつないでおり、APIのみを外部連携するセキュリティアーキテクチャになっている。 IoT事業推進室 室長でIoTプラットフォームシニアプロデューサーの山口亮介氏は、IoTのビジネスを作るうえで「やらなければならない」データの送受信手段やデバイスの認証・管理、安全な通信経路の確保、データの収集/蓄積/管理をsakura.ioが担うことで、サービス側が企画やデータ分析など「やりたいこと」に注力できるとし、これがMVNOや他社とは異なると述べた。 また、IoTの場合、モノづくりのスキルとウェブのスキルが必要になるが、この2つはエンジニアが分かれていることが多い。「sakura.io」を介してモノ側(マイコン)が発する電気信号とウェブで利用されるJASON形式とを相互にデータ変換することでモノのデータをウェブのサービスに展開できるため、エンジニアのスキルセットを大きく拡張しなくてもIoTのサービスを作ることができるというメリットも紹介した。 IoT市場の中では、最もユーザー母数が大きく成長が見込める商業・コンシューマー領域を中心にした「広義」のIoT市場をターゲットとする。すでに採用している業種・分野は広く、行政とベンチャーが協力してバスの乗降データの集計や、ドローンの航行管理システムのバックエンドでも実績があるという。 最新通信モジュールとプラットフォームの機能 モノをつなぐ部分を担う通信モジュールは、まず、LTEカテゴリー1に対応した「単体方式」のものから発売した。価格は1台8000円(税別、90個入りのトレイも用意)。月額利用料金は1台あたり60円(税別)。オプションパーツとしてArduinoやRaspberry Pi用のシールド、開発ボードも提供する。 通信モジュールはこのほか、2.4GHzまたは920MHz(LoRa)の変調方式を採用し、LoRaから各変調方式に対応するゲートウェイを経由して送受信する「ゲートウェイ方式」のものも開発中である。LPWA(Low Power、Wide Area」の一つであるLoRaに関しては、仕様や料金体系をさくらインターネットと共に創り上げていくテストメンバー(法人)を募集している。テスト期間は2017年から6月下旬〜10月で10社程度を予定しているとのこと。 プラットフォームとしての具体的な機能は、デバイスの自動接続機能(認証・識別)、データの自動保存機能、通信モジュール自体のアップデートや時刻情報、さらに新機能としてGPSを組み込まなくても簡易位置情報が得られる機能やデバイス側からファイルを取得できる「ファイル配信サービス」が追加された。 外部連携機能としては、汎用プロトコルとしてWebsocket、MQTT、WebHooksが使用でき、またmyThings、AWS_IoT、Microsoft Azureなど他のデータ処理プラットフォームとの連携もできる。 執行役員で技術本部副本部長の江草陽太氏は、「このプラットフォームにより、新しい価値・新しい市場を生み出すことができる。今後はさくらインターネットの利用者同士でデータの流通が簡単にできるようなデータエクスチェンジの仕組み作りも行いたい」と述べた。 IoT時代の情報信託スキームの調査・研究にも取り組む 続いてさくらインターネットのフェローの小笠原 治氏が、IoTによって集められたデータをエクスチェンジする先のアプリケーションの一つとして、「情報銀行」の調査・研究に取り組むことを明らかにした。 「情報銀行」とは、銀行の口座のように、個人のリアルデータ(動作、行動、体内変化、環境変化など)を預かる個々の口座を作るというものである。 このリアルデータをどのように扱っていくかについて研究や実証実験を行うため、日本総研と組んでSmart Infomation Banking Consortiumを発足。データをためるフェイズでは扱う基準について厳格なガバナンスが必要になるため、制度面も含め、日本総研などとともにガイドライン案の作成を行う予定だ。また、匿名化された情報をいかに利活用して経済価値を高め、ビジネスエコシステムを作るかという観点では、データの分析・解析が必要になるため、IoTプラットフォームだけでなく、この2年間、さくらインターネットが取り組んできたOpen Fog(フォグコンピューティング)や高火力コンピューティングなど複数のリソースを一つながりにして活かせるのではないかと考えているという。しかし、扱う法制度も多くあるため、まずはフィジビリティースタディーからスタートする。 小笠原氏は「データを守るという、セキュリティの視点をベースにしながら、データの利活用も含めた研究をする例は世界でも珍しいのではないか」と述べ、ガイドライン案のみならず、システムのプロタイプを作り、実証実験へと段階を進めていく展望を語った。 ◆sakura.ioのサービスサイト https://sakura.io/ (錦戸陽子)  IT第二幕を世界のニュースで横断読み解き。