Google検索に「ファクトチェック」ラベルが表示されるようになったことが報じられている(この記事の執筆時点で、日本語サイトでは確認できなかった)。下記のニュースソース内で例示されているのは「27 million people enslaved」(2700万人が奴隷状態にある)という文(つまり、“確認したい事象”)を検索ワードとして入れると、そうした事実があるかどうかを「ファクトチェック機関」のサイトにある記事を検索して、そのサイトの検索結果として、ラベルとともに表示する仕組みのようだ。ファクトチェック機関は複数存在していて、さまざまな客観的な情報ソース(1次情報など)や意見などと付け合わせて、レーティング(評価)、すなわち日本語でいうところの“校閲”的な役割を担う中立的な組織とされている。
ここで誤解してはいけないのは、決してこの仕組みはグーグル自身がお得意の検索アルゴリズム、ビッグデータ、人工知能などを使って判定しているわけではないというところだ。もちろん、すべてのメディアの記事エントリーについて、自動的にレーティングが検索結果として表示されるわけでもないということだ。つまり、グーグルとしては検索対象サイトに対する結果表示の新たな工夫を施したというわけだ。
こうした機能が付加されたこと自体は肯定的にとらえられるのだが、ユーザーとしては「ファクト」とは何かについて、あらためて問われているように思う。多少の手間や時間はかかるが、文献など調べれば事実かどうかがわかることもあれば、その解釈を巡って、真偽のほどが確かでないものもある。最近でいえば、「シリア政府がサリンを使った」として、米国側がシリアを空爆したことが大きく報じられているが、「シリア政府がサリンを使った」ということが「事実」かどうかは、米国とロシアのように、国によって意見が割れることがある。かつてのイラク戦争で「イラクは大量破壊兵器を持っている」ということを根拠として、米国が攻撃を行ったとされているが、のちに大量破壊兵器は見つからなかったということもある。その他にも、歴史認識については、思想や信条によって大きく見解が異なることなど多々あるわけだ。「事実」とは、常に「両論ある」ということなのだろう。
冷静に見ればわかる子どもだましのようなうわさ話、捏造(ねつぞう)などは見破ることができても、すべての事象について、誰もが認める「客観的事実」かどうかの判定は難しい。それなのに「ファクト(Fact)=事実」と辞書の第一義的に訳されて(認識されて)、単語だけが独り歩きしてしまうこともちょっと違うように思う。しかも、この話題を報じられている記事の多くでは「グーグルが」という主語で見出しや記事が書かれていることから、誤解も生まれているのではなかということも気がかりだ。「ファクト」を認識することはそれほどかんたんなことではないということだ。