ティム・バーナーズ=リー氏は1989年、欧州原子核研究機構(CERN)在籍中にワールドワイドウェブ(WWW)のコンセプトを発明し、1990年に世界で初めてのウェブ用のクライアントとサーバを実装した。同氏の発明はURI、HTTP、HTMLという、WWWの骨格となる仕様である。そして、1994年には国際技術標準団体であるW3C(World Wide Web Consortium)を創設、2009年にはWorld Wide Web Foundationを設立している。また、技術と民主主義、そして人権という観点から、情報社会のテクノロジーと社会の形成を先導している人物として、世界の国々や組織から数々の賞や称号を受けている。
https://i.impressrd.jp/archives/1528https://i.impressrd.jp/wp-content/uploads/2016/11/ThinkstockPhotos-492960182-600x425.jpghttps://i.impressrd.jp/wp-content/uploads/2016/11/ThinkstockPhotos-492960182-130x130.jpg編集部ニュースキュレーションコラム/インタビュー,コンテンツ,事件・できごと,業界団体,標準化動向,電子出版/コンテンツビジネス2017年3月12日はワールドワイドウェブ(WWW)の28回目の生誕記念日だ。この節目となる日に、WWWのコンセプトを発明したティム・バーナーズ=リー氏が「3つの課題」と題する文章を発表し、昨今のウェブでのコンテンツ流通にまつわる懸念を指摘している。
この文書で述べている3つの懸念はつぎのとおりだ。
われわれは自らの個人データの制御を失ってしまった
あまりにも安易に誤報を流せてしまえるようになってしまった
政治的な広告には透明性と理解が必要だ
まず、すでに多くの人が気付いているとおり、インターネットでは読者が自らの個人データと引き換えることで、無料でコンテンツを閲覧しているが、外部に蓄積された自分の個人データを自らの意思で制御できなくなっていると指摘している。それだけでなく、これらのデータは権力者によっても監視されている可能性もあわせて指摘している。その結果、私たちは言論の自由が脅かされたり、プラバシー、思想信条などがウェブで検索されたりしないようにしなければならないと述べている。
第2の懸念は、ウェブのビジネスモデルについてである。現在のウェブ上のコンテンツビジネスにおける収入は、クリックされることでマネタイズされるという広告モデルによって成り立っているため、クリックされることを主な目的としたコンテンツを作り出す“メディア”が闊歩している点である。これがいわゆる「偽ニュース(フェイクニュース)」を生み出す温床となっていて、社会を扇動してしまう危険性を指摘している。
第3の懸念として、選挙などの政治広告で、ますます巧みな手法がとられるようになり、SNSなどでは対象者ごとに、それぞれの政治的なメッセージが配信されるようになってきていることを指摘している。果たして、これが健全で、民主的な方法なのかとしている。
その上で、ティム・バーナーズ・リー氏は、こうした解決のためにマイクロペイメント(少額課金)やサブスクリプション(一定期間一定額支払い)などのコンテンツビジネスの収益モデルの必要性などを例示するとともに、さらにこうした難題の解決に積極的に取り組んでいくと表明している。
ウェブはいまや人類にとって、欠くことのできない基盤になっていることは間違いない。それだけに、こうした課題を解決することは決して簡単なことではない。しかし、ウェブでのコンテンツ提供者側であっても、利用者側であっても、一人でも多くの人がこうした課題を共有し、かつ、正しい理解をすることを心がけることそのためのの第一歩である。
ティム・バーナーズ=リー氏の略歴
ティム・バーナーズ=リー氏は1989年、欧州原子核研究機構(CERN)在籍中にワールドワイドウェブ(WWW)のコンセプトを発明し、1990年に世界で初めてのウェブ用のクライアントとサーバを実装した。同氏の発明はURI、HTTP、HTMLという、WWWの骨格となる仕様である。そして、1994年には国際技術標準団体であるW3C(World Wide Web Consortium)を創設、2009年にはWorld Wide Web Foundationを設立している。また、技術と民主主義、そして人権という観点から、情報社会のテクノロジーと社会の形成を先導している人物として、世界の国々や組織から数々の賞や称号を受けている。
ニュースソース
Three challenges for the web, according to its inventor[World WIde Web Foundation]編集部編集部np-center@impress.co.jpAdministratorIMPRESS INNOVATION LAB