2017年1月17日〜19日まで、米国ニューヨークでは年に一度の恒例行事となった「デジタルブックワールドコンファレンス」が開催された。それと併催される形で、電子書籍ファイル形式であるEPUBの標準化団体IDPF(International Digital Publishing Forum)とW3C(World Wide Web Consortium)の合併に関する説明をする会合が開かれた。すでに、会員社の投票で合併は承認されているが、関係者が一堂に集まり、今後の手続きや合併後の組織について説明をすることが目的だったようだ。
報道によると、合併反対派からの質問で会議は紛糾をしたという。反対派の主張は、「これは2つの組織の合併ではなくIDPFの終了にともなう、成果物であるEPUB仕様をW3Cへ譲渡ということと同義である」というものである。合併後にEPUBをいかに維持されていくのかどうかについて、これまでのステイクホルダーの発言力が薄まることを指摘していると思われる。また、IDPF事務局長のビル・マッコイ氏がW3Cから受け取る報酬額の開示要求にまで及んでいる。それに対し、IDPFの事務局側は組織のウェブサイトに長大な説明文を掲載して、質問や誤解に対して回答をしている。
IDPFとW3Cはこれまでも共同歩調を取ってきたが、IDPF側は電子出版業界の観点としての活動をしてきた。しかし、W3Cという大きな組織=より大きな観点での仕様策定をする組織に入ってしまうこと、そしてなによりも会費が高額になることにより、加盟し続けられない企業らによっては、発言力が弱まることに対して不満が出ていると読み取れる。
良くも悪くも標準となり、当初よりも大きな市場規模になったEPUBという技術をめぐる動きは、表向きは収束に向かうかのようにも読み取れるが、最終合併までにはまだいろいろと動きがありそうだ。