11月半ばに開催されたNTTドコモの技術展示会「DOCOMO R&D Open House 2016」では5Gの無線技術の開発状況が披露されたことが報じられている。ポイントとなるのはMassive MIMO(マッシブMIMO:多数の素子を使ったアンテナ技術)と呼ばれる技術にあるようだ。かんたんに原理を説明すると、現在の4Gよりも高い周波数を使うが、端末ごとに個々のアンテナ素子との通信を確立することで、高速で安定した通信を行なうという考え方だ。使用する周波数が高くなることから、さらに直進性が増すため、移動体での使い勝手などに課題も残るようだが、それも多くの実証実験を重ねて解決されつつあるようだ。すでに、NTTドコモと東武鉄道は東京スカイツリー周辺などを5Gトライアルサイトとして、VR動画配信実験の計画も発表しているので、体感できる日も近い。
また、ソフトバンクもIoT向けの通信基盤で利用されるNB-IoTの実証実験の様子を公開した。こちらは5G技術で利用される技術のMassive MIMOの技術を先取りし、いまの通信に利用しようというものである。IoT時代には、基地局は大量の端末装置を収容する必要が出てくる。Massive MIMOを使って、低速でも収容可能な端末数を飛躍的に増加させることが狙いだとしている。
携帯電話はもちろんだが、IoT端末など、無線通信を使う端末はいまよりも大幅に増加することは間違いないだろう。しかも、ある端末は高速な通信をする必要があり、ある端末は比較的低速な通信をするだけだが、類似な端末が大量に存在していて、リアルタイムに扱う必要があるなど、要求される仕様も多様化していく。国際標準も見据えながら、通信各社はもちろん、最近ではベンチャー企業もこの分野においては通信技術開や運用技術、さらにはクラウドまでを含めて新たな通史価値を向上させつつある。