この世の中にコンピューターが登場して以来、数値計算分野では圧倒的な実力があることに異論を挟む人はいないだろうが、自然言語処理については残念ながら停滞をしていた。「かな漢字変換」はバージョンアップごとに、それなりに性能向上した分野ではあるが、いまだに同音異義語の誤変換は鬼門だ。また、ワープロソフト内での文字校正や用字用語統一についても、さまざまな校正ツールがリリースされているものの、どれもいまひとつと言わざるをえない。もちろん、自分で辞書をチューニングすればそれなりの成績はでるとは言われているものの、経験者が時間をかけてツールにデータを蓄積していかなければならない。そして、翻訳についてはまったくといっていいほど使い物にはならない。いちいち辞書を引かなくても、概要がなんとか理解できるかどうかというあたりが限界だった。筆者のように、編
集という仕事をしている者の一人としては、これだけ高度な情報処理技術が発達し、ネットワークでつながっているのに、「文字列置換」や「間違い探し」といった単純作業のために、時間を浪費していることに落胆しつづけ、もはや自分の命あるうちには解決できない命題だと、そこには期待すらしなくなっていたというのが正直なところだ。
しかし、ここにきてグーグルがニューラルネットワーク、つまり人工知能技術を使った翻訳システムをリリースした。文学作品などへの適用はさておき、技術文書などに対してはかなり良好な結果が期待できるようだ。一方、日本語文書を英語に翻訳した場合、英語圏の人たちはどれほどの評価を与えるレベルかが気になるところだ。日本にある技術的なドキュメントも少なくとも英語で世界からの検索対象になっていなければ価値は大幅に下がっている。しかし、十分でなくても、英語として認識できるのであれば、情報のリーチは大幅に広がるはずだ。自然言語処理における技術のイノベーションは始まったばかりだが、今後の伸びしろには大きな期待をしたい。

ニュースソース

  • なぜGoogle翻訳は賢くなれたのか[ITメディア
  • グーグル、ニューラル機械翻訳の仕組みをブログで解説[CNET Japan
  • 新Google翻訳を使って3700ワードの技術文書を1時間で翻訳した[科学と非科学の迷宮
  • Google翻訳のAI、未学習の言語ペアも「そこそこ流暢」な翻訳が可能に。言葉の意味を中間言語化、他の言語に適用[Engadget Japan
https://i.impressrd.jp/wp-content/uploads/2016/12/ThinkstockPhotos-526179995-600x400.jpghttps://i.impressrd.jp/wp-content/uploads/2016/12/ThinkstockPhotos-526179995-130x130.jpg編集部ニュースキュレーションAI(人工知能),情報通信,新製品,電子出版/コンテンツビジネスこの世の中にコンピューターが登場して以来、数値計算分野では圧倒的な実力があることに異論を挟む人はいないだろうが、自然言語処理については残念ながら停滞をしていた。「かな漢字変換」はバージョンアップごとに、それなりに性能向上した分野ではあるが、いまだに同音異義語の誤変換は鬼門だ。また、ワープロソフト内での文字校正や用字用語統一についても、さまざまな校正ツールがリリースされているものの、どれもいまひとつと言わざるをえない。もちろん、自分で辞書をチューニングすればそれなりの成績はでるとは言われているものの、経験者が時間をかけてツールにデータを蓄積していかなければならない。そして、翻訳についてはまったくといっていいほど使い物にはならない。いちいち辞書を引かなくても、概要がなんとか理解できるかどうかというあたりが限界だった。筆者のように、編 集という仕事をしている者の一人としては、これだけ高度な情報処理技術が発達し、ネットワークでつながっているのに、「文字列置換」や「間違い探し」といった単純作業のために、時間を浪費していることに落胆しつづけ、もはや自分の命あるうちには解決できない命題だと、そこには期待すらしなくなっていたというのが正直なところだ。 しかし、ここにきてグーグルがニューラルネットワーク、つまり人工知能技術を使った翻訳システムをリリースした。文学作品などへの適用はさておき、技術文書などに対してはかなり良好な結果が期待できるようだ。一方、日本語文書を英語に翻訳した場合、英語圏の人たちはどれほどの評価を与えるレベルかが気になるところだ。日本にある技術的なドキュメントも少なくとも英語で世界からの検索対象になっていなければ価値は大幅に下がっている。しかし、十分でなくても、英語として認識できるのであれば、情報のリーチは大幅に広がるはずだ。自然言語処理における技術のイノベーションは始まったばかりだが、今後の伸びしろには大きな期待をしたい。 ニュースソース なぜGoogle翻訳は賢くなれたのか[ITメディア] グーグル、ニューラル機械翻訳の仕組みをブログで解説[CNET Japan] 新Google翻訳を使って3700ワードの技術文書を1時間で翻訳した[科学と非科学の迷宮] Google翻訳のAI、未学習の言語ペアも「そこそこ流暢」な翻訳が可能に。言葉の意味を中間言語化、他の言語に適用[Engadget Japan]IT第二幕を世界のニュースで横断読み解き。