アレン・マイナー氏が語る日本ベンチャーへの思い

イノベーションラボ

 日本のインターネットビジネスの黎明期からベンチャー投資を行ってきた株式会社サンブリッジ代表取締役会長兼CEOのアレン・マイナー氏は、ベンチャー支援事業「グローバル・ベンチャーハビタット」の本格始動にあたって、7月12日、記者会見を開き、事業の背景と日本のベンチャービジネスに対する思いを語った。

ベンチャーハビタットの開始

 サンブリッジが投資活動を開始したのは1999年12月、翌2000年の4月には渋谷マークシティにベンチャー育成施設「サンブリッジ・ベンチャーハビタット」(SVH)をオープンした。
 インターネットへの期待が高まり、当時は行政もインキュベーション施設を盛んに作っていたが、「インキュベーション」という言葉は生まれたての生き物をケアして死なせないようにするという意味合いがあり、アレン氏にとっては違和感があった。安い賃貸オフィスを探しているだけの力のないベンチャーと付き合いたいのではなく、高いポテンシャルを持つ起業家と組んで投資も含めたコラボレーションをしたい。そう考えていたアレン氏は、生息地を意味するHabitatと名づけて支援事業を開始、シリコンバレーのような新しいビジネスの生態系作りを目指して、ベンチャーに最適な環境を提供することにした。

 当時はネットバブルの名残があり、IPO直前の企業を探しては広く浅く投資しようとするところも多かったが、ベンチャーハビタットの方針は、狭い領域に絞り、その分野で最も優れたアイデアを持つ企業を1社選んで支援していくというものである。

世界に出ていけなかった日本のベンチャー

 サンブリッジの投資先は、2002年10月にJASDAQに上場したジー・モード、2004年1月に東証マザーズに上場したマクロミル、2006年6月に名証セントレックスに上場したオウケイウェイヴなどがある。
 世界で初めてJavaが携帯電話に搭載されると同時に脚光を浴びたケータイゲームのジー・モードや、インターネットリサーチを行うマクロミルは、当時、世界から見ても斬新なネットビジネスに取り組んでおり、同社の投資実績も上がっていった。
 しかし、そうした優れたビジネスが生まれていた状況にあっても、日本から世界に通用するベンチャービジネスを育てることはできなかったとアレン氏は振り返る。たとえばジー・モードは、いかに速くIPOを達成するかということを優先していたため、海外の通信事業者から採用したいというオファーがあった時にすぐに応えることができなかった。IPOをする前に世界展開を優先するべきだということを当時もっと主張していたら、ここまで日本と世界との差が大きく開くことはなかっただろうとアレン氏は語った。

初期段階からグローバルを視野に入れる

 こうした経験をふまえ、今年本格始動するのが「グローバル・ベンチャーハビタット」である。サンブリッジが投資段階として大事にしてきた「シード期」と「拡大期」のうち、特にシード期でのグローバル展開を重点的に支援する。初期段階からグローバルを視野に入れることで、後々大きな成長が見込めると考えている。支援拠点は現在、東京、大阪、シリコンバレーにあるが、今後は別の地方都市やアジアにも新たな拠点を開くことを検討している。

 また、同社は今年5月から、若手起業家とエンジェル投資家とを結ぶ「Innovation Weekend」というネットワークイベントを定期的に開催しているほか、6月にはグローバル志向を持つ企業に実際にシードマネーを供給する「サンブリッジ・スタートアップスLLP(有限責任事業組合)」(出資1億円)もスタートした。
 さらにこの8月には、シリコンバレーに日本の起業家および起業家を目指す人を連れていき、現地ベンチャーとセッションを行う「JANNOVATION(ジャノベーション) Week」というツアーを計画している。日本の起業家は発想力に優れ、クリエイティブなセンスを持っているが、プレゼンが下手で、世界にアピールできる機会もあまりない。このツアーでは、現地でトレーニングをしつつ、実際に投資家向けのプレゼンテーションを行うピッチコンテストを実施したり、在米メディアの記者にアピールする場を設けたりすることで、参加者が世界展開をするための足かがりにしてほしいと考えている。

震災後に存在感を増すアントレプレナー

 記者会見の最後に、震災を機に日本のベンチャー環境に変化はあったのかという質問をしたところ、アレン氏はこう答えてくれた。
 「環境は変わっていないが、意識は大きく変わったと思う。起業家はスピーディーで大胆な取り組みができる人。震災後の日本社会では、その役割が必要とされている。これまで日本での起業家のイメージは、"お金儲けをしようとする人"であり、それゆえに成功するとかえってたたかれることが多かった。しかし、今回の震災では、多くの日本の起業家が社会奉仕のために積極的に寄付を行っている。こうした活動が注目を集め、アントレプレナーの社会的役割の重要性が日本でも少しずつ認識されるようになっている。さらに今後は、新しい流れとして、社会問題を解決するソーシャルビジネスのムーブメントが強まっていくだろう」。

サンブリッジ グローバルベンチャーハビタット
http://www.sunbridge.com/habitat/