現実味を帯びてきた“Web3.0のシナリオ”(最終回)

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ウェブサイエンス2.0の胎動~半歩先を行くWeb2.0+論~

第十二話(最終回) 現実味を帯びてきた“Web3.0のシナリオ”

森田 進(有限会社ストラテジック・リサーチ)

本連載では、前途遼遠、前程万里でその根底から議論の揺らぎを見せている「Web2.0」を軸に、次世代ウェブが孕むパラドックスとサイエンスとしての発展可能性についてさまざま角度で論評を企てていきたい。

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シナリオ・プランニングとしてのWeb2.0/Web3.0

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Web2.0とは、その本質がウェブ文化・思想面でのムーブメント(パラダイム論)なのか、社会(ソーシャル)な新たな関係性やコミュニティ次元のコンセプトなのか、技術・実装・活用手法を含めたウェブ技術のイノベーションなのか、あるいはこれらすべての動向が体系として整わないうちに噴出した歴史的なイベントとみるべきなのか、こうした雲を掴むような論争が続いているうちに、最初の提唱者であったティム・オライリー氏、リサーチ会社のガートナー・グループ、メディア世界のBBC、ニューヨークタイムズ等々こぞってWeb2.0からWeb3.0への進化、Web3.0で対象となるテーマについて問題提起するようになってきた。

本連載の第一話において、「Web2.0はいまだ蛹か幼虫の状態ではあるものの、現代(今)とほんの先の未来とを繋ぐための知覚として、これからWeb2.0が変えていく変容の中身、Web2.0の多層に渡るリアリティをひたすら観測しつづけていきたい。」と記した。Web2.0は確かにオライリーグループが最初に打ち出した原理ではあったものの、オライリー氏らが自覚しているいないに関わらず、ある種の戦略意図が背景にあり、色濃く浸透していたのではないかと見ている。その戦略意図をあえて筆者なりに解釈すると、「シナリオ・プランニング[用語解説]」としかいえないある種の雰囲気のようなものである。

かつて筆者は某学会で「バランス・スコアカード」という経営手法・戦略手法を研究する部会を立ち上げ、主宰していたことがあった。バランス・スコアカードをはじめ戦略論を議論するときには、世界状況の変化に対する認識と新しい世界に対する共通認識、企業・自治体をはじめとする組織全体に秩序を生み出すための経営フレームワークなどが重要なテーマとなる。その際に、シナリオ・プランニングという手法を重視し、この手法の意義を主張してきた。

シナリオ・プランニングのシナリオは映画や演劇の台本に由来する。世界がこれからどう展開するのかについて物語というスタイルを取りながら可能性のあるいくつかの未来への道筋を示し、とるべき適切な対応を見出すための方法論である。不確実な現実世界で変化しつつある諸側面を認識し、長期的視野を持ちながらそれに適応する(意思決定を下す)ためのツールである。こうしたシナリオ・プランニングのアプローチは正式の方法論というよりも、ものの考え方を深め、それを組織において共有したり、自己組織化的な行動に結び付けたりするための思考トレーニングというほうがふさわしい。

ドライビングフォースというのは推理小説で譬えれば犯人の「動機」、または容易に説明がつかない犯行動機を解明する探偵の「関心領域」のことである。また、冒険物語で譬えれば冒険旅行の「目的」(主人公の探求を妨害する緊張・リスク要素)である。シナリオの筋書きを動かす要因であると同時に物語の結末を暗示するものでもあり、判断を研ぎ澄まし、シナリオに沿った行動を助けてくれる道具なのである。

企業経営(事業運営)では、法的規制の変化、原材料価格の突然の高騰や下落、競争相手の技術革新等々、予期せぬ事業環境の変化に戸惑い、往々にして不意を突かれることが多い。それまでに多くの予兆があったにも関わらず、死角を突かれ、シナリオを描けなくなった経営者はえてして問題をより悪化させてしまう行動に出てしまう。企業組織の中には環境変化(予兆)に敏感な人が必ず存在するはずだが、経営層や組織全体の「気づき」につながるとは限らない。その時々の予兆がなにを意味しているのかを認識し、この予兆がどちらに転んでも対処できるようにするための根拠がドライビングフォースである。

マネジメント・コントロール論の大家であるロバート・サイモンズは、組織を戦略に沿った方向に維持することを「サイバネティック・ビュー」と呼んでいたが、フォークソノミー、リッチ・ユーザー・エクペリエンス、ユーザーの積極的な貢献、ロングテール、CGM、ラディカル・トラスト、分散性といった「Web2.0のキーコンセプト」とは技術体系や仕様、ガイドラインといった範疇に収まるものではない。IT業界やウェブカルチャーをあるストラテジーに沿った方向に維持するための「サイバネティック・ビュー」であり、次世代ウェブのシナリオを動かしていくためのドライビングフォースに他ならない。Web2.0が他のIT体系(パラダイム)とまったく異なる視点が必要となるのは、こうしたシナリオ・プランニングによる自己組織化的な変化を誘導しているからであろう。

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