アップルとグーグル―Talk 02:ビジョンとこだわりの重要性

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[Apple × Google Talk]
小川 浩 × 林 信行

書籍『アップルとグーグル』の執筆に先立って2007年12月に行われた、小川浩氏と林信行氏によるブレストを兼ねた対談の模様をお届けします。

第2回は、両社のビジョンとこだわりについて

構成:編集部
写真:渡徳博

「アップルとグーグル」特設ページ


カルチャー的にまったく違うところもあるけど
本質にズバッと切り込むところはよく似ている

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●林 アップルって、10年前はとても苦しい状況だったじゃないですか。1997年にスティーブ・ジョブズがアップルに戻ってきたころの講演で、当時もパソコンのシェアはWindowsが95%でMacが5%と圧倒的な差があったにもかかわらず「パソコン市場にはプレイヤーは2人しかいない。アップルとマイクロソフトだけだ!」と、まるで対等な立場であるかのような言い方をしていた(笑)。

つまり、市場の中でアップルとマイクロソフトが組むと最強で、新しい秩序などをこの2社が作っているという意味だったわけです。いつの間にかパートナーが入れ替わっていて、アップルとグーグルが組むことで、世のパソコン業界の秩序を作れる情勢になっている。そしておそらく、両者はそれをやろうとしているんじゃないかと。

どちらからともなく、互いに惹かれあうところがあったと思いますね。カルチャー的にまったく違うところもあるけど、一方で本質にズバッと切り込むところはよく似ている。

●小川 アップルにもグーグルにも失敗したプロジェクトはたくさんあります。それでも、アップルはきっと諦めないだろうし、繰り返すことで徐々に成果を出してくる。本質的に、あきらめるべきところや撤退すべきところはすぐに切るし、今回は失敗したけどあきらめずに地道にやっていくというものには、とてもしつこいですよね。

グーグルベースが鳴り物入りで登場したけれど、今ではあまり注目されていない。でも地道に進めてはいるし、あのコンセプトはまだ生きていると思います。

●林 その点は両社の共通点ですね。両社は5年先、10年先ぐらいのビジョンをなんとなくもっていて、それを実現しようとしているから行動がぶれない。たとえ途中で失敗しても、最終的にたどり着ければいいんだという考えが根底にあるから。

アップルは、いくら社名から「コンピュータ」を外したとはいえ、長い間ハードの儲けで食べてきた会社。やはり「まずパソコンありき」なんですよね。アップルが生き残るには、パソコンをもっとおもしろいものにしなくてはいけないと考えていたはずです。その中で2001年に到達したアップルの結論が「これからはデジタルライフスタイルの時代」というもの。「デジタルハブ構想」といって、いろんなデジタル会社が登場してくればくるほど、実はパソコンが重要なんだというビジョンを描きました。その考えから出てきたのがiPodやApple TVだった。

●小川 「デジタルハブ」というビジョンでいうと、アップルの場合、当初はキーボードとモニター付きのハードウェア的なものを意識していたと思います。今は、どちらかというと、Mac OS Xが中心なっているじゃないですか? つまり、OS Xを動かして、クリエイティブに作業をするためにマウスやキーボードが必要になるというイメージ。キーボードでなくてタッチパネルでもいいですし、インターフェイスそのものは、もっと先を考え始めているじゃないかと。

●林 グーグルのビジョンは、創業時から一貫している「世界中の情報を体系化して、誰でも検索できるようにする」というミッションステートメントに集約されている。あらゆる製品がこの目的達成のためにデザインされている。どちらも、芯があるんですよ。

●小川 芯がありますね。立体的に考えていますよね。本当は、日本人もそういう考え方が得意なはずなんですが、最近ダメですね。

●林 ダメですよね。何か表面的で、一時的な短期思考ばっかりで。

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特徴がなくてエッジがないと
特殊なブランド感が出てこない