Foo Camp―GoogleやWikipedia創業者も参加するオライリー主催プライベートイベントの全貌【後編】
[Foo Camp 2007レポート]
オライリーが主催するイベントは、Web 2.0 SummitやWeb 2.0 EXPO、OSCONにETechなど、最前線で活躍する業界注目の人々が参加することで有名だ。そのなかで発表される内容や語られるテーマは、世界中から注目されるため、いまやIT業界の名物イベントとなっている。その中でもちょっと異質なのが「Foo Camp」である。完全招待制であるため、その内容を知る人は少ない。このレポートでは、2007年6月に行われたこのイベントを前・中・後編の3回にわたってお伝えしていく。
最終回となる後編では、興味深いセッションやそこで紹介された技術、そして個性的な参加者たちについて紹介する。
文・写真:林信行(Nobuyuki 'Nobi' Hayashi)
Foo Camp '07の注目セッション
さて、ここからはFoo Campで知ったおもしろいテクノロジーやおもしろい人物について紹介しよう。まずはMicrosoft Live研究所のブレーズ・アゲラ・イ・アルカス氏がライトニングセッションで披露した「PhotoSynth」という技術だ。Foo Campではすでに何度か紹介されたことがあるようだが、筆者はとてもビックリした。
これは、Flickrなどのサイトから集めてきた観光名所についての大量の写真を1つの3D画像にまとめあげてしまう技術だ。たとえばパリのノートルダム寺院が3Dイメージで映し出されるので、マウスを使って映像にズームしていくと、大量の写真の中からそのアングルの写真が表示される。さらにズームしたり、角度を変えると、その角度、その大きさに近い写真をツギハギしたイメージが現れる。さらに飾りの彫刻部分にズームするとその写真が映し出される。といった具合に画像認識で大量の写真を認識して1つの3Dモデル上でつなぎ合わせる技術で、それら大量の画像をナビゲートすることで、ツギハギながらもリアルな3Dイメージを楽しめるようになっている。百分は一見に如かず、ウェブサイトのデモを見てもらうのが一番早いだろう。

PhotoSynth。同じ場所を写した大量の写真を画像認識して1つの立体モデル上で合体させる。このソフトがどれくらいすごいかはデモ版を体験してもらうのが一番だ。デモはWindows XPとVista専用。それ以外のOSのユーザーにはリンク先のムービーを見て欲しい。
http://labs.live.com/photosynth/video.html
英国Royal College of Arts(王立芸術大学)のマノリス・ケライディス氏は、紙の書籍とインターネットとをつなぐbLINKという試みについて講演した。Foo Campでの講演ではないが、この試みについてはティム・オライリー氏自身のブログでも伝えられている。
Asteriskというオープンソースのテレフォニー技術に関するセッションもおもしろかった。セッションでは、ニューヨーク大学の大学院生の女性2人が「Botanicalls」というサービスを、ダン・アルブリットン氏が「MegaPhone」というゲーム技術をデモした。
このBotanicallsは、水不足の観葉植物から電話がかかってくるという技術だ。鉢の中に水分センサーが埋め込まれており、水分が不足していると、植物からあらかじめ登録した電話に音声合成の声で電話がかかってくる。植物の違いがすぐにわかるように、音声合成の声もアイルランド訛りの植物や、ニューヨーク訛りなど、数種類のものが用意されている。
一方の「MagePhone」はケータイを使ったマルチプレーヤーゲームをつくるためのフレームワークだ。
アルブリットン氏は、このプラットフォームでつくられたゲームをいくつかデモで紹介した。1つは起動するとパソコン画面上に(Asteriskで割り当てられた)電話番号が表示される。
プレーヤーが自分のケータイでその番号に電話をかけると、ゲーム画面に自分のキャラクターが表示される。キャラクターは、ケータイのキーパッドの[4]と[6]で左右に、[2]と[8]で上下に操作でき、[0]でミサイルを発射できる。大勢でゲームに参加し撃ちあいをした後、ゲームの勝者が携帯電話の電話番号の下4桁で表示される、というもの。
もう1つのゲームは、声を使ったゲームで、やはり同様にあらかじめゲームに割り振られた番号に携帯電話から電話をかけ、キャラクターが声の大きさにあわせて上下に動くというもの。
アルブリットン氏は、このゲームをニューヨークのタイムズスクエアの大画面に映し出したことがある。タイムズスクエアを行き交う人々が、スクリーンを見て、自らのケータイでゲームに参加して楽しむというパフォーマンスだ。彼は実は同じことを東京の渋谷でもやろうとして、来日したが実現しなかったという苦い過去を持つ。実現に手を貸してくれそうな人がいたら、ぜひ教えて欲しいと頼まれた。

ダン・アルブリットン氏(写真左端)は、オープンソースのテレフォニー技術「Asterisk」をベースに、ケータイを使ったマルチプレーヤーゲームを実現。ティム・オライリー氏も熱中していた。
筆者は参加していないが、「Chumby」という商品のセッションもかなり盛り上がったようだ。「Chumby」は無線LANや大型液晶などを備えたデバイスだ。使い方は特に決まっておらず、ハッカー達がおもしろい使い方を自ら提案し、発明するという形で製品を発展させようとしている。実は昨年のFoo Campでデビューし、セッションの参加者全員に無料で配られたらしい。1年目を迎えた「Chumby」はFlashに対応し、インターネットのビデオストリーミング放送などにも対応したという。また公式ホームページにて本格的な販売も始まった。残念ながら今年のFoo Campでは「Chumby」本体が配られることはなかったが、Foo Campへの感謝の印としてマスコットのキーホルダーが配られていた。

液晶、無線LANとなどを搭載しハッカーに好きなように使ってもらうことで商品価値を高めようとしているChumby。今年は本体は配られなかったが、マスコットが配られていた。公式ホームページはこちら(http://www.chumby.com/)。
Foo Campでは、テクノロジー系以外のセッションも多い。筆者はあまり参加できなかったが、唯一、参加したセッションでは、Kiva.orgという発展途上国のアントレプレナーを支援するサービスが紹介されていた。

発展途上国のアントレプレナーを支援するサービス。kiva.orgのデモ。
Foo Campでは、ロシア市場、中国市場など、BRICs関連のセッションもいくつかあった。参加者の多くが、発展途上国を支援することで、長期的にみて自らの市場を拡大できるという認識を共有している印象を受けた。OLPC関係のセッションでも、アフリカなどの発展途上国でのインターネットインフラをどのようにして発展させたらいいのかといったことがかなり真剣に議論されていた。



One Laptop Per Child(OLPC)。通称、100ドルPC関連のセッションも行われた。会場には合計3台のOLPCがあり、集会スペースに無造作に置かれていた。

OLPCのセッションにはWikipedia創業者のジミー・ウェールズ氏(左から2人目のオレンジ色のシャツ)やマルチタッチ液晶操作技術でアップルの先を行くジェフ・ハン氏(左手前)らも参加。真剣なまなざしで試していた。





