FSV #34 OpenOfficeの世界(2)ウェブベースのUlteo登場

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米国企業IT戦略レポート~フロム・シリコンバレー

森 洋一(テクノロジーリサーチャー)

シリコンバレー在住の森洋一氏による、米国企業を中心としたITビジネスとテクノロジー戦略の最新レポート。オープンソース、マイクロソフト、エンタープライズといったテーマについて現地の視点から考察していきます。

今回は、OpenOffice.orgを紹介する第2回、Ulteoオンライン・デスクトップについて。


今度はUlteoからウェブベースのOpenOffice.org(以下OOo)が出た。

必要なのはブラウザーだけ、ダウンロードもインストールも要らない。Ulteoが始めたオンラインサービス(ベータ版)は登録ユーザー制だが、ブラウザー上でOOo2.3が利用でき、さらにインスタント・コラボレーション機能もあって、非常に魅力的だ。

Ulteoの生い立ち

Ulteoはフランスのスタートアップ、それもあのMandrake Linuxを開発したゲール・デュバル(Gael Duval)氏の会社である。1998年、氏がデベロッパー仲間と設立したMandrakeSoftは、使い易いグラフィカルなMandrakeを提供して多くのファンを惹きつけた。しかし同社のその後は多難だった。2002年にはCaldera、SuSE、TurboLinux、Conectivaが始めたLinuxの統合仕様UnitedLinuxへの加盟問題、2003年会社更生法、2004年に復活、2005年2月にはブラジルのConectivaと合併し、同年4月社名を現在のMandrivaに変更した。

デュバル氏が目指したものは昔も今もWindowsからの開放である。

氏の旧ブログには「ボクのPCは100%マイクロソフトから自由だ、君はどう?(My PC is 100% Microsoft FREE and You?)」という問いかけがある。ブログを読むと当時会社は人事や経営が上手く行かず、2001年からの4年間は大変だったことが解る。経営的な問題からConectivaと合併、氏は「Mandrakeは死んだ」と宣言、実質、同社から身を引き、次の活動場所を求め始めた。

Ulteoファウンダー兼CTOゲール・デュバル氏(同氏より提供)。
Ulteoファウンダー兼CTOのゲール・デュバル氏(画像は同氏より提供)。

新しい目標、それはどんなOSも気にしないWebデスクトップ(Web OS)の世界。Ulteo開発プロジェクトがスタートしたのは2年前だ。彼のプロジェクトはリードエンジニアのDaniele Favara aka nomed氏とデベロッパー5人、それにWebエンジニアが3人。Ulteoの全容が見え始めたのは昨年の夏、それからOOoに対象を絞ったベータサービスが始まった。

Ulteoオンライン・デスクトップの世界

Ulteoを使うためには、まず、ベータテスターのアカウントがいる。

ログインすると、そこはUlteoオンラインの世界。ブラウザー越しのブルースカイに左右幾つかのアイコンが並ぶ。デフォルトでは、右にプレゼンテーションのImpress、表計算のCalc、文書作成のWriterの3つ。左には「My Files」「Web」「My e-mails」「Instant Messaging」「My Photos」などがある。画面のアイコンから判るようにブラウザー(Web)はFirefox、Eメール(My e-mails)はThunderbird、インスタントメッセージ(Instant Messaging)やフォト(My Photos)はKDEプロジェクトのKopeteとDigiKamgである。もちろん、これらのアイコンはデスクトップのどこにでも動かせるし、ごみ箱(画面右下)だってある。

Ulteoデスクトップ画面にならぶ各種アイコン、そして立ちあがるOpenOffice.org 2.3。
Ulteoデスクトップ画面にならぶ各種アイコン、そして立ちあがるOpenOffice.org 2.3。

「OpenOffice Writer」をクリックして立ち上げる。

いつものようにOOoのカモメが出てきてお馴染みのWriterの画面が現れる。ここでメニューやヘルプは勿論日本語であるが、現在のUlteo(ベータ)がすべての言語パックをサポートしておらず、残念ながら日本語入力はできない。Writer以外にCalcもImpressも使い勝手は完璧にOOo2.3と同じだ。ただ、処理がオンラインであることからレスポンスが遅いことは致し方ない。利用にあたって、リクアイアメントはFirefox 1.5か2、IEなら6か7、そしてJava Scriptが動くSun Java Runtime 1.4以上が必要だ。

Ulteoデスクトップ上で動くOpenOffice Writer(文書作成)。
Ulteoデスクトップ上で動くOpenOffice Writer(文書作成)。

Ulteoデスクトップ上で動くOpenOffice.org Calc(表計算)。
Ulteoデスクトップ上で動くOpenOffice.org Calc(表計算)。

Ulteoのすべてはオンラインの世界で処理される。

画面上部にあるタブはそのためのものだ。ファイル転送用の「Transfer Files(左上)」をクリックすればローカルにあるPC上のファイルとUlteoオンライン間の移動ができる。作成したファイルを仲間とオンラインでシェアするには「Share desktop(中央上)」をクリックし、相手のeメールアドレスを入れれば良い。最後の「Close desktop(右上)」はUlteoの終了用だ。

Ulteoデスクトップ上でファイル転送を使ってローカルPCからオンラインにアップ中。
Ulteoデスクトップ上でファイル転送を使ってローカルPCからオンラインにアップ中。

デスクトップ左にある「My Files」はファイル・マネージャである。

My Filesを開くとオンライン上のファイルが種別を示すシンボルで表示されるし、Ulteoデスクトップ上の「Web」アイコンをクリックすればFirefox、「My e-mails」をクリックすればThunderbirdが立ち上がる。これらデスクトップにあるアイコンからの起動だけでなく、左下のUlteoスタートボタンを押せば、WindowsやLinuxでお馴染みのメニューが現れ、その他のプログラムが表示される。

Ulteoスタートボタンから各種アプリケーションが起動できる。
Ulteoスタートボタンから各種アプリケーションが起動できる。

これからの展開

Ulteoは実際のところ良くできている。

同社の発表はOOoのオンライン版だったが、実はよくできたWebデスクトップである。ファウンダーのデュバル氏はこのことについて、発表したOOoサービスはUlteoで動かす格好の題材であり、われわれにとって第1ステップであること、そしてOOoとはすでにジョイントプロモーションを開始したと説明する。OOoのマーケティング・プロジェクトリーダーJohn McCreesh氏もOOoの潜在的なユーザーがUlteoによってインストールなしに試用ができることは魅力的だと好意的に話す。

また、最近のOOoコミュニティでは、今後どのようにオンライン・コラボレーションを進めるかが大きな議論となっており、このことも両者の協調を後押ししている。

現在、デュバル氏にはエンジェル(個人投資家)もCEO(Thierry Koehrlen氏)も見つかった。そして、氏は第2ステップへの展開に思いを馳せる。すべてはUlteoが正式版となる頃にははっきりし、現在の無償OOoサービスとは別に、Webデスクトップを前面に出した製品や有償の高機能Ulteoデスクトップサービスが登場する可能性は高い。


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森 洋一(もり よういち)
森洋一ポートレート写真IAF Software, Inc. Partner。米国シリコンバレー在住。明治大学卒。日本ユニシス入社後、金融機関向けリアルタイムシステムの設計と開発、流通マーケティング/オープンシステムマーケティングなどに携わる。2002年に退社。シリコンバレーにオフィスを開設し、テクノロジーリサーチャー/コンサルタントとして活動。著書に『オープンシステム・ウォーズ』『シリコンバレーからのメッセージ』(ともにオーム社)があるほか、雑誌、新聞などにも数多く寄稿。株式会社インプレスR&D シニア・アナリスト。