めざすは人々のインフラとなるサービス――オープン化の波に立ち向かうmixiの戦略

人々のインフラとなるサービスをめざすmixi
「オープン化への適応」と「文化の情報化」でオープン化の波に立ち向かう

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米国では、MySpaceに続く新興SNSとしてFacebookが注目を集めている。10月に行われたWeb 2.0 Summit 2007で話題をさらったのもFacebookだった。

そんな状況を反映してか、11月15日にWeb 2.0 EXPO Tokyoの1コマとして行われたミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏による講演には聴講希望者が殺到した。

「囲い込み」「閉鎖的」と言われてきたSNSも、オープン化指向というWeb 2.0の流れにあって、変化と適応が求められている。日本では最大のユーザー数を誇るmixiも例外ではない。インターネットという土俵では避けられない国際化、オープン化の波に対してmixiはどのような手を打つのか。

山路 達也(フリーランスライター)

SNSとしての圧倒的な強さを見せるmixi

株式会社ミクシィ 代表取締役社長 笠原健治氏。
株式会社ミクシィ 代表取締役社長 笠原健治氏。

日本においては、SNSの代名詞となっているmixi。Web 2.0 Expo Tokyoでの同社代表取締役社長、笠原健治氏の講演には開場前から長い行列ができ、注目度の高さがうかがえた。

「SNSの現状と今後の可能性」と題した笠原氏の講演は、まずmixiの現状報告から始まった。mixiのユーザー数は11月7日時点で1240万人、PCとモバイル(携帯電話)を合わせて月間ページビューが122.6億。総利用時間やページビューはYahoo! JAPANに次いで2位、日本のSNS利用者の87.2%がmixiを利用しているということで、圧倒的なポジショニングを見せている。PCからのページビューは頭打ち傾向にあるが、モバイルからのページビューは増加しており、ユーザー数の伸びも鈍化はしていない。モバイルではmixiと競合するSNSも少なくないが、PCとモバイルの両方を持っているのはmixiならではの強みだという。

mixiが成功している要因を、笠原氏は次のように説明する。

「SNSが登場した頃、SNSには2つのタイプがありました。1つはリアルな人間関係を再現することに重きを置くもの。もう1つは、新しいつながりを重視するもので、mixiは後者の動的なSNSを目指したのです。友達が日記を更新する、自分の日記にコメントが付く。こうしたアクションとリアクションを楽しみたいというユーザーの気持ちが、アクティブ率の高さにつながりました」

ここ2~3年の潮流として、UGCやCGMと呼ばれるユーザーが作成したコンテンツの盛り上がりが上げられる。これもmixiの人気を支える大きな要因になっていると笠原氏は指摘する。

ユーザーとメーカーが共同でカップ麺を開発

続いて、笠原氏はmixiのメディアとしての力について述べた。

既存メディアでは、情報の送り手と受け手が明確に別れており、情報に非対称性がある。ところがmixiでは、日記やコミュニティを通じて活発な情報交換が行われており、誰もが送り手であり受け手である。

「mixi内に限ったことではありませんが、現在は情報の非対称性の解消が進んでいます。よい製品はクチコミで売れるし、製品の悪いところもすぐに伝わります。こうした潮流の一端をmixiが担いたいと考えています」

mixi内では口コミで情報が伝播し、コミュニケーションが活発なため、ユーザーの滞在時間も長い。趣味・嗜好別にコミュニティができているので、ターゲティングも行いやすい。こうした特性により、既存メディアでは難しかったマーケティング手法が可能になってきている。

エースコックの公認コミュニティ「カップめん開発オーディション」。
エースコックの公認コミュニティ「カップめん開発オーディション」。エースコック新商品開発室に配属されたコブかみ氏によって運営されている。ここから生まれた「つゆ焼そば」と「カレーラクサ春雨」が商品化され、12月10日に発売されることになった。
http://mixi.jp/view_community.pl?id=2230034(※アクセスにはmixiアカウントが必要)

笠原氏が挙げた事例の1つが、「カップめん開発オーディション」だ。エースコックの公認コミュニティ内で新商品のアイデアをユーザーから募集し、それをメーカーが実際に商品化したのである。

もう1つは、バイラルCMと呼ばれる広告手法だ。映画「ファンタスティック・フォー: 銀河の危機」の公開に合わせて動画が提供され、mixiユーザーはそれを自由に日記に転用できる。「バイラル」(ウイルス性)という言葉通り、広告が伝染していく。広告主からすれば、どういう経路でどのようなユーザーに広告が見られているのかを正確に把握できるというメリットがある。

いずれの事例もユーザーの反応がよく、広告主からは高い評価を得ているという。

mixiをアプリケーションのプラットフォームに

SNS関連サービスでの大きな話題といえば、GoogleがSNSの共通API「OpenSocial」を提唱したことと、それにmixiが賛同したことが挙げられる。笠原氏によれば、mixiが元々API公開の準備を進めていたところに、Googleから共通APIの話が来たとのこと。

OpenSocialに基づいたAPIを提供することで、2つの大きな可能性が広がると考えられる。

1つは、mixi外部のウェブアプリケーションがmixi内の情報を利用できるようになるということ(もちろん、情報はユーザーの同意に基づいて利用される)。もう1つは、mixiがプラットフォームとなり、mixi内でアプリケーションが稼働するようになるということだ。mixi日記を置き換えるようなアプリケーションが登場することもありえるかもしれないという。

mixiのユーザー数は1200万を超え、ニーズの多様化が進んでいる。APIの提供により、大小さまざまなニーズを満たせるサイトにmixiが成長していけると、笠原氏は期待する。一方、APIを公開することでmixiに流れていたトラフィックの一部が他のサービスに流れることもあるのではないかと、聴衆から質問が飛んだ。

「確かに、トラフィックの一部を失う可能性もありますから、APIの公開は慎重に進めていく予定です。mixi自体もこれまで以上に使ってもらえるよう、レベルアップする必要があります」

また、APIの公開時期や方法は未定と前置きした上で、Facebookが行っているAPI公開との違いについても言及した。

「Facebookでは、アプリケーションの開発者が自分でトラフィックに耐えうる環境を用意しなくてはなりません。mixiの場合は、アプリケーションの動作環境もmixiが提供し、開発者がサーバーなどを用意しなくてもよいようにする予定です」

mixi上で映像や文学を情報化する

最後に笠原氏は、情報化の観点からSNSの可能性を語った。

1970年代は企業の情報化の時代、1980~95年は個人の情報化の時代、1995~2005年は社会の情報化の時代。そして、2005年以降は、音楽・映像・文学といった文化的なものが情報化されていく、文化の情報化の時代だという。

mixiは人と人のコミュニケーションのプラットフォームとして始まった。次の段階として、mixi上にアプリケーションやデータベースを構築し、文化的なコンテンツを集積させる。

「今後は、検索技術やレコメンド(推奨)機能によって、SNSはよりパーソナルなメディアへ進化していくでしょう」

SNSの今後の可能性をフェーズ1~4の段階に分けて説明。現在のmixiは、フェーズ2~3の段階だという。
SNSの今後の可能性をフェーズ1~4の段階に分けて説明。現在のmixiは、フェーズ2~3の段階だという。日本人の特性を良く知るmixiにとって、「文化の情報化」が差別化を図る鍵になるのか。