米Google担当エンジニアが語ったiGoogleのコンセプトとガジェット開発者へのメッセージ

仲里淳(編集部)
協力:iGoogleガジェットコンテスト事務局


「そっけないほどシンプルなページ」

Googleが登場した当時からよく言われるのが、検索用のテキストボックスとボタン、それに数個のリンクだけという検索ページのデザインである。そのシンプルさが特徴であった検索ページを、ユーザーが好きなように情報や機能を詰め込めんでカスタマイズできるというのがiGoogleだ。

iGoogleは、もともと「Googleパーソナライズド ホーム」という名前で提供されていたもので、Google Labs.で誕生し、卒業していったサービスの1つ。名称変更とともにテーマ変更機能などを備えてリニューアルしたことで、より幅広いユーザーにも注目され、同時にその最大の特徴ともいえるガジェットの数も急速に増えつつある。

「Google検索の新しい顔」ともいえるiGoogleについて、その担当エンジニアでありiGoogleのUIデザインチームのチームリーダーを務めるジェシィ・シェ氏に、サービスのコンセプトやガジェット開発へのメッセージを語っていただいた。

iGoogleの“i”に込められたパーソナライズ追求の姿勢

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ジェシィ・シェ(Jesse Shieh)
米国ジョージア工科大学大学院卒業。専門は、ユビキタスコンピューティング及びパーベイシブコンピューティング。2005年に米国Googleに入社。iGoogleのUIデザインチームのチームリーダーを務める。

●編集部 iGoogleの担当エンジニアということですが、具体的にはどういったことをされているのでしょうか。

●シェ ソフトウェアエンジニアですので、コーディングをしていることが多いですね。対外的には、iGoogleのユーザーインターフェイス(UI)デザインチームのリーダーという立場です。

●編集部 UIということは、「テーマ」などの機能も含めた部分を担当しているということでしょうか。

●シェ 厳密に担当が分かれているわけではなくて、チームのメンバーがその時々で必要な部分を手伝うという風に、カジュアルな感じのチームです。ですから、たまにガジェットやそのパッケージをちょこっと開発することもあります。

●編集部 以前は「パーソナライズド ホーム」と呼ばれていましたが、それがリニューアルしたときiGoogleに名前が変わりました。「テーマ」の切り替えができるのはとても面白い機能ですが、変更の理由は何だったのでしょか。

●シェ iGoogleの目的は最初から、ユーザーにカスタマイズできるサービスを提供することでした。そのなかで一番求められていたのは、ページのコンテンツを簡単に、自由に選べるようにするということです。

これからは、コンテンツ以外にももっとパーソナルにカスタマイズできるものを提供していこうと考えています。テーマ以外にも、カスタマイズできる要素をさらに加えていくでしょう。

テーマ機能を加えた理由はたくさんありますが、一番の理由はユーザーからのフィードバックが多かったということです。「こういうテーマや機能を追加したら面白いのではないか」というメール(意見)を数多くいただいたので、それを採用していきました。今後のテーマでは、オープンに開発できるAPIの提供を予定してます。

Googleで全般的に言えることですが、提供するサービスの内容やプロジェクトの方向性は、ユーザーの意見によって成り立っています。開発者やプロダクトマネージャーの意見よりも、ログのデータやユーザーの意見を集めた統計が、プロジェクトの方向性を決めています。ですから、iGoogleのユーザーにもフィードバックを送ってほしいとを常にお願いしています。

●編集部 「iGoogle」という名前には、どういった意味が込められているのでしょうか。

●シェ 以前の「Googleパーソナライズド ホーム」という名前は、長くて言いにくいところもあったので、もう少し覚えやすいものにしたのです。

●編集部 確かに、長いので記事でも書きにくいことがありました(笑)。

iGoogleの前身「Googleパーソナライズド ホーム」では、テーマ機能は備わっていなかった。また、凝ったガジェットもまだ少なく、RSSなどのフィードを表示するものが中心だった。
iGoogleの前身「Googleパーソナライズド ホーム」では、テーマ機能は備わっていなかった。また、凝ったガジェットも少なく、RSSなどのフィードを表示するものが中心だった。

●シェ 「iGoogle」ならシンプルで覚えやすく書きやすかったので、この名前に落ち着いたのだと思います。また、「i(アイ=私)」と付くことで、「Googleを自分のものにする、カスタマイズできる」という意味を含めて、このサービスにふさわしいということで。

●編集部 iGoogleは、特にこういうユーザーに使ってほしいといったことはありますか。たとえば、テーマ機能によって子どもが使うようになるとか。

●シェ 特定のユーザーに使ってもらおうと思ってテーマを取り入れたのではなく、あくまでもユーザーからのリクエストに応えたわけです。ただし、そういった機能を追加することでユーザー層が広がるならそれに越したことはありません。実際、テーマ機能は女性ユーザーに人気です。

APIの開放がよりよい製品づくりをもたらす

●編集部 iGoogleの最大の特徴は、ガジェットを自由に選んで配置できることですが、そのガジェットの規格をオープンにして、いろいろな人が自由に開発できるようにしたのはどういった意図があったのでしょうか。

●シェ 限られた人数では、できることにも限界があります。われわれだけでは、すべてのユーザーが要求するガジェットを作ることはできません。すべてのユーザーに満足してもらうために、APIを公開して誰でも作れるようにしました。そのおかげで、現在1万3千個以上のガジェットがあります。限られた人数でも時間さえあればそれだけの数を作れないこともないのですが、アイデアが思い浮かばないということもあります。

たとえば、毎日どれだけの水を飲むと健康かということで、飲んだ水の量を計算してくれるガジェットがあるんです。これは、われわれだけでは思い浮かばなかったガジェットですね。APIを公開することで、優れたガジェットやコンテンツが増えると、それによってiGoogleというプロダクトもさらによくなるということです。

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●編集部 これはとてもユニークだなとか、面白いと思ったものはありますか。

●シェ ユニークなガジェットはたくさんあります。たとえば「F-1 Pit babe」というガジェットがその1つです。「pit babe」というのは、F1レースで停車してタイヤを取り替えたりガソリンを入れたりするのを手伝う女性のことですが、その女性たちの写真が毎日切り替わって表示されるガジェットがあります。

もう1つは、ユーザーがテーマを自由に作ることができる機能を提供するものです。インライン機能を使っているのですが、iGoogleのテーマ機能をうまくすり抜ける方法を見つけたというわけです。

実は、われわれ開発チームもテーマの切り替え機能を提供しようとしていたところだったのですが、それよりも先に実現されました。その後、この開発者からも意見を頂戴しました。

ちなみに、Google Gadget Venturesという制度を米国で最近始めて、彼の会社はその制度の対象になっています。

この制度は、登録されているガジェットの中で、ある程度のダウンロード数を超えて、かつGoogle社内で検討した結果すばらしいと認められたものに対して、5000ドルの奨学金のようなものを、さらなる開発のための資金として提供するという試みです。

この制度には2つのアプローチがあります。1つは純粋に補助金を提供するというもので、優秀な開発者を支援しますが、代償は何も求めません。自由に使ってかまわないというものです。もう1つが投資で、これは10万ドルという大規模なものになります。起業しようと考えている開発者に投資して、Googleが株式の一部シェアするというものです。

まだまだ進化を続けるiGoogleの最新機能

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●編集部 積極的にAPIを提供しているとのことですが、ぜひ注目してほしいというものはありますか。

●シェ たくさんのAPIや機能がありますが、新しいのはガジェット同士で通信できるというものです。Gadget-to-Gadget Communicationと呼んでいるもので、API開発者向けガイドでも解説されています。

これは、1つのガジェットで何か操作をすると、もう1つのガジェットにその情報を与えるということができます。たとえば、Googleファイナンスがそれです。もっと大きなインターフェイスになるようなアプリケーションなら、複数のガジェットに分けて、ファイナンスアプリだったら、グラフを別のガジェットから操作するとか、そのような機能が考えられます。

もう1つ、ぜひとも使ってほしいのがFlashを扱うAPIです。ゲームでもビデオでも、すでにFlashのデータを持っているなら、それをガジェットにするのはとても簡単です。swfファイルのURLをコピー&ペーストするだけ。たったの5分でできますよ。そしてすでにウェブサイトを持っている方は、こういうのも使えます。ウェブサイトのURLをここにコピペするだけで、ガジェットが作れます。

また、ガジェット開発用のツールとして、Google Gadget Editorがあります。ガジェットは作ったものの、それをホスティングする自分のウェブサイトを持っておらず応募ができないと悩んでいる方には、このツールは役立つでしょう。これを使えばインラインでガジェットの開発とプレビューができます。

ほかにもGoogle Page CreatorGoogle Codeなどを使うと、プロジェクトのホスティングができます。

ガジェット作成に特化した「小さなIDE(統合開発環境)」とも言えるGoogle Gadget Editor。ガジェットの1つとしてiGoogleに追加すると、「書く→実行→書く→実行」が容易にできる。
ガジェット作成に特化した「小さなIDE(統合開発環境)」とも言えるGoogle Gadget Editor。ガジェットの1つとしてiGoogleに追加すると、「書く→実行→書く→実行」が容易にできる。

●編集部 米国でもガジェットコンテストを開催しましたよね。

●シェ 昨年、大学生を対象にしたコンテストを行いました。いろいろな部門を用意しましたが、デザイン性、芸術性の高いガジェットが受賞していました。ほかにも、「一番役に立つガジェット」(Most useful gadget)、「賢いガジェット」(Most intelligent gadget)、「中毒しそうなガジェット」(Most addictive gadget)、「いつもきれいなガジェット」(Prettiest gadget)、「ナンパに一番役立つガジェット」(Gadget most likely to help you get a date)なんていうのもありました。

米国で大学生を対象に開催された「Google Gadget Awards」の受賞作品

人気ガジェットを作る秘訣は「シンプル・イズ・ベスト」

●編集部 現在、「iGoogleガジェットコンテスト」が行われています(※応募受付はすでに終了。この記事の最後を参照)。開発者へのアドバイスを。

●シェ 受賞するのは必ずしも技術的に複雑で高度なガジェットではなく、短期間でも魅力的なものは作れます。人気のあるガジェットは、シンプルで使いやすいもの。今から作り始めても不可能ではないと思います。米国のコンテストで受賞したガジェットにも、面白くて斬新なものが多かったです。

また、自分の作ったガジェットにどれくらいのページビュー(PV)があるかを知るのもお勧めします。天気予報ガジェット(米国版)を作ったのですが、1週間で3億回以上のPVがありました。これだけのPVがあるのは誇りに思っています。天気予報ガジェットは、日本でもいい例かもしれませんね。日本の天気予報ガジェットにはまだいいものがないそうなので、いいものを作ればきっとウケると思います。

シェ氏が示してくれた人気ガジェットの種類とページビュー。
ガジェットページビュー
天気予報 3億2100万
日時(時計) 1億7800万
Gmail 1億4700万
CNN 9000万
ウィキペディア 4200万
星座占い 3200万
付箋メモ 2000万
カレンダー 1900万
ToDoリスト 1800万
YouTube 1200万

PV数の表示は、日本のiGoogleガジェットページにはありませんが、米国のサイトに切り替えれば表示されます。あとは、Google Analyticsを使って調べることもできます。

●編集部 ありがとうございました。

iGoogleガジェットコンテスト
iGoogleガジェットコンテスト

現在、GoogleとインプレスR&Dの主催による「iGoogleガジェットコンテスト」が行われている。

すでに応募受付は終了したが、応募作品は以下のページで掲載されており、実際にiGoogleへ追加して使える。実用的なものからジョークガジェットまで多彩な作品がそろっているので、iGoogleユーザーはぜひ試してほしい。なお、コンテストの結果発表は10月下旬を予定しており、受賞作品はインターネットマガジンでも紹介していく。