FSV #19 新コンセプトPCの登場(3) バーチャル・デスクトップのPano

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from Silicon Valleyティザー画像

米国企業IT戦略レポート~フロム・シリコンバレー

森 洋一(テクノロジーリサーチャー)

シリコンバレー在住の森洋一氏による、米国企業を中心としたITビジネスとテクノロジー戦略の最新レポート。オープンソース、マイクロソフト、エンタープライズといったテーマについて現地の視点から考察していきます。

今回は、新コンセプトPCを紹介するシリーズの3回目、ソフトウェアをまったく持たないパソコン「Pano」について。


シリコンバレーのPano Logicからソフトウェアを一切搭載しないパソコンが登場した。

その名を「Pano」という。たった5センチメートル平方角の小さな筐体にはパソコンの主要コンポーネントのCPUやメモリーはなく、ソフトウェアも一切搭載されていない。ユーザーは筐体のUSBにキーボードとマウスを接続し、ディスプレイとインターネットを各々のポートに繋ぐだけ。利用できるOSは、インターネットの向こう側のデータセンターにあるWindows VistaかXP。すなわち、仮想化されたデータセンターをリモート・アクセスするバーチャル・デスクトップである。

サイズの小ささもさることながら、そのデザインも従来のパソコンとは一線を画す。オーディオ入出力、USB、イーサネット、ビデオ出力のポートが筐体背面にある。※提供:Pano Logic
サイズの小ささもさることながら、そのデザインも従来のパソコンとは一線を画す。オーディオ入出力、USB、イーサネット、ビデオ出力のポートが筐体背面にある。
※提供:Pano Logic

通常、PCで使用するソフトウェアは個別に導入することが当たり前だ。しかし、このソフトウェア搭載型PCは、いわゆる「ファットクライアント」と呼ばれ、企業内利用ではソフトウェア・ライセンスと管理費用が膨大となり、ルーチンワークしかやらない業務では無駄が多い。このような理由から、米国ではTCOを重視して、サーバー側にソフトウェアを乗せて共有し、PC側を軽くするシンクライアントが普及している。

今回紹介するPanoは、シンクライアントをより前進させたものだ。

シンクライアントでは小型CPUと少量のメモリーを実装しているがPanoには何もない。あるのは3つのUSBとオーディオ、インターネット、ディスプレイ接続のポートだけ。このUSBポートには外付けCDドライブやプリンターなども接続できる。Panoは単なるデバイスであって、インテリジェンスはない。逆説的な言い方ではあるが、これによってセキュリティの心配やソフトウェアのアップデートもなく、それがバリュープロポジションとなっている。

Panoはインターネットを介して、データセンターにあるサーバーに繋がれている。

Panoの電源を入れ、ログオン画面でWindowsの認証を入力、後は通常のPCと同じだ。

データセンター側はVMwareで仮想化され、それぞれのユーザーが利用できる仮想マシンにWindowsやアプリケーションが用意されている。Panoと仮想サーバーの論理的な中間、といっても物理的にはセンター側であるが「Pano Management Server」が存在する。これがミソである。このソフトウェアが常時Panoを監視し、Panoから接続要求があると仮想マシンを割り当てる。勿論、Active Directoryと連動したログオン画面を表示するのもこのソフトウェアであり、すべてを中央から管理する。Pano Management Serverはまた、システム管理用のウェブコンソール機能、ユーザーのセッション・トラブルなどにも対処する。

インターネットを介してPanoと仮想サーバーが繋がっており、Pano Management Serverがそれを常時監視している。※提供:Pano Logic
インターネットを介してPanoと仮想サーバーが繋がっており、Pano Management Serverがそれを常時監視している。
※提供:Pano Logic

トラブル時には、Panoの上部にある三角形のボタンを押すと多様なヘルプが選択できる。

たとえば、(1)Windowsがフリーズしたので初期状態に戻したい、(2)トラブルがどこか見極めたいので他の仮想マシンに切り替えたい、(3)急いで作業を継続したいので仮想マシンのイメージをデスクトップやラップトップに移したい等など。これらのオプションを選択すると仮想マシーンのイメージ・リフレッシュやロールバックなどが実行されるが、いずれの場合も作業中のドキュメントやファイルを失うことはない。

仮想化サーバー側を見てみよう。

PanoはインターネットをOver IPだけでなくOver USBとしても利用する。その結果、Panoは完全なデバイスとなり、すべてはVMwareを搭載した仮想化サーバーで処理される。まずPanoインストーラーを起動するとVMwareを自動検出し、なければVMware ESX ServerとVMware VirtualCenterのインストレーションに進む。すでに導入されていればその上にPanoソリューションが乗り、その後、VMwareの手順に従って、Panoで使用するWindowsのコンフィグレーション、さらにCPU数やメモリー、ディスク容量などのハードウェア・リソース設定などを行って最初の仮想マシンを作成する。この仮想マシンをテンプレートに必要数だけ仮想マシンのクローンを生成、それらは実行時にエンドユーザーのPanoとPano Management Serverによって結び付けられる。

同社の当面のマーケティング戦略はエンタープライズ市場だという。

Panoの本体価格は300ドル、それに年間20%程度のサポート保守費用がかかる。またサポート保守を含めた月額20ドルのサブスクリプション方式も用意され、どちらかを選ぶことができる。

企業がPanoを用いた新しいシンクライアント・システムを構築するためには、アプリケーションをどのように扱うかを決めなければいけない。全ユーザーを均一にする方法もあるが、部門や職種、プロジェクトなどによって使用するアプリケーション・セットを幾つか用意することが一般的だ。Panoシステムではこのセットをコレクションと呼び、Pano Management Serverを通して必要なコレクションとユーザーが関係付けられる。企業向けWindowsのライセンスについては、4月始めにマイクロソフトが発表した仮想化サーバー接続のディスクレスPC用「Windows Vista Enterprise Centralized Desktops(VECD)」ライセンスを利用すると割安となる。Panoシステムの販売は、同社による直販だけでなく、コンサルテーションや導入サポートができるITサービス・プロバイダーがあたる予定だ。

Panoにとって現在はVMwareがサーバーシステムの条件であるが、次のステップではXenベースの仮想化システムやWindows Server 2008で採用されるマイクロソフトの仮想化技術Viridianについても対応させる考えだ。

Panoは構造の簡素化と仮想化サーバーの利用で、シンクライアントからバーチャル・デスクトップに進化した。デバイスとなったPanoの消費電力はたった5ワット、これは一般PCの3%程度だ。デバイスであるが故にトラブル時もスタッフが出向くことはなく、すべてのソフトウェア更新はセンター側で行われる。同社が主張するTCOの70%削減はともかく、どのくらい浸透するか見守りたい。


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森 洋一(もり よういち)
森洋一ポートレート写真IAF Software, Inc. Partner。米国シリコンバレー在住。明治大学卒。日本ユニシス入社後、金融機関向けリアルタイムシステムの設計と開発、流通マーケティング/オープンシステムマーケティングなどに携わる。2002年に退社。シリコンバレーにオフィスを開設し、テクノロジーリサーチャー/コンサルタントとして活動。著書に『オープンシステム・ウォーズ』『シリコンバレーからのメッセージ』(ともにオーム社)があるほか、雑誌、新聞などにも数多く寄稿。株式会社インプレスR&D シニア・アナリスト。

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