FSV #07 Web 2.0の新技術(1) Mac & Yahoo!ウィジェットとGoogleガジェット、そしてVista

from Silicon Valleyティザー画像

米国企業IT戦略レポート~フロム・シリコンバレー

森 洋一(テクノロジーリサーチャー)

シリコンバレー在住の森洋一氏による、米国企業を中心としたITビジネスとテクノロジー戦略の最新レポート。オープンソース、マイクロソフト、エンタープライズといったテーマについて現地の視点から考察していきます。

今回からの3回で、Web 2.0の新技術を紹介していく。第1弾は、「小さなウェブサービス」とも言える新時代のデスクトップアクセサリ「ガジェット/ウィジェット」について。


Mac OS Xの新機能として登場したウィジェット

ウィジェット(Widget)がデスクトップに最初に登場したのは、2005年4月末にリリースされたMac OS X 10.4(コード名「Tiger」)からだと思う。OS X 10.4では同梱されたミニアプリケーションをホットキー(デフォルトは[F12]キー)で切り替えて表示するDashboardが登場した。つまりDashboardがウィジェットの実行環境となり、HTMLやCSS、JavaScriptを使って作られたアプリケーションを走らせた。発表当時はたった14個だったウィジェットも、開発環境の公開と普及で現在(2007年6月時点)は3,000近くに膨れ上がっている(図1)。

図1 Mac OS XのDashboardで表示させたウィジェット。
図1 Mac OS XのDashboardで表示させたウィジェット。

そのAppleは、6月11日~15日に米サンフランシスコで開催されたWWDC(World Wide Developers Conference)2007で、発売を6月末に控えていたiPhoneについて、ウェブ開発情報「Web Development for iPhone」を公開すると発表した。iPhoneのタッチスクリーン上の各種アプリケーションは、誰の目にも統制のとれたウィジェットの集合体であるかのように見える。

図2 Googleデスクトップのサイドバーとガジェット。
図2 Googleデスクトップのサイドバーとガジェット。

Googleの場合、2004年に始まった「Googleデスクトップ検索」は、当初タスクバーに検索ワクを設けた形で登場した。翌2005年8月には「Googleデスクトップ2」でスクリーン右側に表示されるサードバー(図2)が登場し、ユーザーは各種の情報をパーソナライズできるようになった。サイドバーはパネルと呼ばれる領域に区分され、そこに用意された「新着メール」や「株価」「天気予報」などのミニアプリケーションを選択して表示させる。これがGoogleガジェット(Gadget)の始まりである。

図3 Windows Vistaのサイドバーとガジェット。
図3 Windows Vistaのサイドバーとガジェット。

2006年2月に公開されたバージョン3では、サイドバーのカスタマイズ機能を向上させたり、[Ctrl]キーを2度押すと「Quick Search Box」がスクリーンの中央に表示されて、どの場面でもすぐに検索が行えるようになった。バージョン4(2006年5月)では、ガジェットは大幅に増え、バージョン5(2007年3月)になるとWindows Vistaに合わせ、サイドバーが壁紙に溶け込む透明なデザインへと進化している。

ガジェット開発のために公開されている「Google Desktop Gadgets API」には、JavaScriptやVBScriptで作成するためのオブジェクトやメソッドが含まれ、それらは「Google Desktop SDK(Software Development Kit)」として提供されている。またバージョン4からはインターフェイス設計やテストなどを行う統合開発環境の「Google Desktop Gadget Designer」もリリース、一般デベロッパーによる「Google Desktop Gadget Contest」も開催された。

マイクロソフトも今年初めにリリースされたWindows Vistaから同じようなサイドバー(図3)とガジェットの提供を始め、デベロッパ向けリソース・サイト「Gadget Builder Depot」を開設している。

Googleはまた、4月末にユーザーがカスタマイズできるポータル・サービスの「Googleパーソナライズド ホーム」を「iGoogle」と名称変更して機能向上を図った。このiGoogleの使用にはGoogleアカウントが必要だが、サイドバーのガジェットと同じようなコンテンツが表示できるる。さらに追加コンテンツには、Googleならではの各種検索用のものやニュース/スポーツ/テクノロジーなどをRSSで集めた情報表示が勢ぞろいし、整理のためのタブの追加、そして壁紙にあたるテーマ設定も可能となっている(図4)。

図4 「パーソナライズド ホーム」から名称を改めリニューアルされたiGoogle。
図4 「パーソナライズド ホーム」から名称を改めリニューアルされたiGoogle。

Googleガジェットの始まりと同時期、2005年7月、Yahoo!もJavaScriptのランタイム・エンジンを開発していたPixoriaを買収して、この分野へ参入することになった。Pixoriaの製品「Konfabulator」(コンファビュレイター)は、WindowsやMac OS X上でミニアクセサリを実行できるものだ(図5)。Yahoo!はこれを広くXML APIに適用し、「Yahoo!ウィジェット」として公開、ここでもデベロッパー・ネットワークの拡大が試みられた。

図5 ウィジェット環境として人気の高かった「Konfabulator」が元になっているYahoo!ウィジェット。
図5 ウィジェット環境として人気の高かった「Konfabulator」が元になっているYahoo!ウィジェット。

見た目や機能は似ているものの実行環境は異なるという現状

このように、ウィジェットやガジェットには幾つかの方法がある。

ユーザーインターフェイスの視点から見ると、AppleのDashboardウィジェットとYahoo!ウィジェットは、「画面上のどこにでも配置できる」という点で共通している。一方のGoogleとマイクロソフトのガジェットは酷似し、Googleはサイドバーへの配置にこだわり、マイクロソフトもこの方式に追従した。サイドバー方式は、ワイド画面(最近の家庭向けPCで多く採用されているWXGAやWSXGAなどの横長画面)に適し、いつでも見られるという利点がある。しかしその代わりに、表示しておける情報量には制限がある。そこでGoogleは、iGoogleと使い分けることで、一般使用にはサイドバー、上級使用にはiGoogleという併用作戦に出たように思える。

さて、各社とも、普及のために開発者のネットワーク作りには夢中だ。

これまでに賞金付きのコンテストなどの甲斐あって、現時点での登録数はGoogleが7,800件~、Yahoo!も4,100件~、Appleが3,000件~となっている。しかし、これらは仕組みがほぼ似ているものの実装方法が異なるため、開発者は同じような開発を行ったり、一方でユーザーは混在使用が難しく、見せかけの混用もままならない。

この現象はAjaxも同様だった。

Ajaxの場合は、もっと多くのランタイム・エンジンやツールが存在し、状況を憂えたベンダー数社が音頭をとって2006年始めに「OpenAjax Alliance」を設立した。しかし、一旦、広がってしまった方法は1つにはならず、現在はオープンソース化の推進を通して、相互互換性などに傾注している。

ここで注目される動きがあった。

2007年6月、Opera SoftwareがブラウザーOpera 9のリリースにともなって、ウィジェット仕様を公開したのだ。

同社は、その仕様をW3C(World-Wide Web Consortium)に提出し、2006年の暮れからオープン・スタンダード「Widgets 1.0」として検討が始まった。しかし、W3Cで標準化が決まっても、各社が従来路線を改めて1つの仕様に向かうことは容易ではない。ただ、一方で、どの方法もAPIやSDKを公開し、一部コードのオープンソース化も始めている。状況は楽観的ではないが、エンタープライズへの適用には標準化は欠かせず、関係者の努力に期待したい。


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森 洋一(もり よういち)
森洋一ポートレート写真IAF Software, Inc. Partner。米国シリコンバレー在住。明治大学卒。日本ユニシス入社後、金融機関向けリアルタイムシステムの設計と開発、流通マーケティング/オープンシステムマーケティングなどに携わる。2002年に退社。シリコンバレーにオフィスを開設し、テクノロジーリサーチャー/コンサルタントとして活動。著書に『オープンシステム・ウォーズ』『シリコンバレーからのメッセージ』(ともにオーム社)があるほか、雑誌、新聞などにも数多く寄稿。株式会社インプレスR&D シニア・アナリスト。